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英語アレルギー患者のためのIFRS勉強法


 会計業界では、今、国際会計基準(IFRS)がホットトピックであるわけですが、内部統制監査の導入時と同様、できる限り危機感をあおってひと儲けしようとする監査・IT・コンサル業界の関係者も多くいらっしゃるようで、金融庁が「IFRSの誤解」なる文章まで作って業界の過熱営業を冷まそうとしています。
 私達が普段接するクライアント様も、「今回は内部統制の時のように周りの喧騒にあおられるものか」というスタンスで、慎重に様子見しているところが、まだまだ多いように思います。

 そうは言っても、2010年3月決算でIFRSを早期適用した日本電波工業のような会社も現実には出てきています。全社の方針はどうあれ、「当社も会計基準変更時のインパクト分析(GAP分析)ぐらいはざっくりしておかなければ」と思っている財務・経理の実務担当者はかなりいらっしゃるはずです。ただし、財務・経理部門というのは、今も昔もコストセンターで、自ら執行できる予算が少ないのが悩みです。結果、コンサル会社に丸投げできるような会社は少なく、セミナーや勉強会に経理財務部門担当者が足しげく通って情報を集め、見よう見まねでGAP分析プロジェクトを立ち上げたという会社も多いのではないでしょうか。

 そんな方にぜひ、お勧めしたいのが、欧州企業やオーストラリア企業のアニュアルリポート(できれば自社と類似した業種の会社)の開示例分析です。この手の会社の財務諸表や注記情報を何社もじっくり見ていると、おぼろげながらIFRSそのもののイメージも見えてきます。
 ただ実際のところ、上場企業の開示資料というのは、内容そのものがかなり専門的で、IFRS適用で注記量が倍増しているような会社もあることも考えると、これを英語で読むとなるとかなり苦痛な方も多いのではないでしょうか。
 私は仕事柄、この手の英文開示資料を読まざるを得ないことも多いのですが、英語となると仕事のスピードがガクッと落ちる点では、巷に多い英語アレルギー会計士と同様です。

 そんな私を含めた英語アレルギー患者の皆さんにとっておきの裏ワザを今日はご紹介します。それは、東証の外国部に上場している等の理由で、日本で有価証券報告書を提出している欧州上場企業の有価証券報告書(日本語翻訳版)をまずざっとレビューしてしまうという方法です。EDINETで外国法人・組合を指定し、有価証券報告書を選んで検索すると、200社以上の開示書類がヒットします。このうち、本社住所が欧州の企業、たとえば、ルノー、ダイムラー、ドイツテレコム、バイエルなどの有価証券報告書をコピーして、片っぱしから財務諸表や注記情報を読んでいくと、上述した開示資料の分析がスムーズに行えます。特に日本語翻訳版有価証券報告書は日本基準とIFRSの相違点などについての注記も充実していますので、「典型的な修正仕訳がどの箇所で生じているのか」というのが実践感覚でつかめてきます。ここでざっくりつかんだ上で英文にあたると、効率は断然上がります。

 この外国企業の日本語版有価証券報告書の存在は、案外知らない方が多いのではないでしょうか。米国のブルーチップ銘柄(P&Gやジョンソン・エンド・ジョンソン、GEなど)を保有していたり、投資を検討されている方で、「英語アレルギーあります」という方は、会社がせっかくコストをかけて作ってくれていますので、ぜひ利用をお勧めします。主な財務数値は、日本円での金額併記もありますので、規模感もつかみやすいです。

 最後になりましたが、よく聞かれる質問で、「マネジメント向けに、IFRSの全体がすっきりわかるような、あおり本ではない、まともなものがないか?」というのがあるのですが、最近出版された以下の書籍が、一般の方にも読みやすく、かつ内容が適度に専門的で本質をついているという点で、読後、非常に良い印象を受けましたので紹介しておきます。


 

| cpainvestor | 01:17 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
IFRS財務三表新様式は本当に導入されるのか?


 最近、ビジネス系雑誌などでも国際会計基準(以下IFRSとする)特集が組まれるようになり、大分注目度が高まってまいりました。今後は、このブログでも、IFRSという新しいカテゴリーを設け、時折、IFRSがらみのコラムも記載していきたいと思います。なお、あらかじめお断りしておきますが、専門家として情報の正確性の担保するべく最善の努力はしますが、あくまで私的ブログですので、その内容を鵜呑みにせず、必要に応じて必ず原典(英文、メールアドレス等登録すると見れます)をあたるようにして下さい。

 今回とりあげたいのは、国際会計基準委員会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が議論している「財務諸表の新様式」です。2008年10月に公表されたディスカッションペーパー「財務諸表の表示に関する予備的見解(リンク先は和訳)」(以下DPとする)にて新しい財務三表の様式が提案されています。

 「百聞は一見にしかず」ということで、まずはこのDPに記載されている財務三表の新様式をご覧頂きましょう。

財政状態計算書(これまでのBSに相当)

包括利益計算書(これまでのPLに相当)

キャッシュ・フロー計算書(直接法によるCF計算書に相当)

 これまでの財務三表を見慣れている経理担当者や個人投資家の皆さんから、「なんだかわかりにくいなあ」という声が聞こえてきそうです。また、世の上場会社様からは、「また内部統制の時みたいに制度を複雑に変更して業界の人間が儲けることをたくらんでいるでしょう?」とつっこまれてしまいそうな、大きな変更です。

 私がこの財務諸表を初めて見て受けた印象は、「税金計算のための帳簿付けの会計を完全に脱却して、投資家のための会計を本気でやるつもりだな」というものでした。以下のように財務三表をこの表示コンセプトに基づき整理してみると、この表示形式の意図がより顕著に見えてきます。



 このように活動の性質別に整理された財務諸表を使うと、DCF法による企業価値評価などの際は、数字がとても拾いやすくなります。特に異常値(非継続事業)控除が過去に遡ってなされるようになると(財務諸表がリステイトされるといいます)、継続事業の損益水準の将来予測もしやすくなります。また、キャッシュ・フローなども直接法(収入から支出を控除する形式)で表示されるようになると、資金繰りがよりリアルに見えるようになり、マニアな投資家の皆さまにとっては、大変ありがたい代物になるのではないでしょうか。

 ただ、財務諸表作成者側の負担は、相当重くなりますね。IFRSの適用で、ただでさえ注記情報が多くなって難儀するのに、このような大胆な表示科目の組替えのためには、資産・負債の勘定科目明細それぞれに営業・投資などの紐付けまで行わなくてはならなくなりますから、そのコード体系の整理だけでもかなりの作業になります。

 また、キャッシュ・フローを直接法で作成するとなると、現行の会計システムだけで対応するのは至難の業です。また、簿記を3級、2級と学んで「数字を締める」ということに特化した、あまり「投資マインド」をお持ちでない経理担当者にとっては、厄介物以外の何物でもないでしょう。「なぜこのような表示形式に手間暇をかけて組み替えるのか。これまで簿記で学んできたものとは、全然違うし、試算表ベースで貸借合致をすぐに確認できないことにでもなれば、検算しにくくてしょうがない。」とかクレームが多数出そうです。

 この財務諸表表示、利用者である投資家と飯の種になる会計士、情報システム会社、開示書類印刷会社、会計専門書出版社などには、ありがたいかもしれませんが、各国で本当にすんなりと導入されるかどうか。今後の国際会計基準委員会(IASB)での議論の動向が見ものです。

| cpainvestor | 20:40 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

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