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監査難民予備軍企業とリスクテイカー会計監査人
 
 Grandeさんが」採り上げてくれるプレスリリースを読んでいると、ここのところ「会計年度途中での会計監査人変更」を行う企業が、かなりの数、出てきていることに気付かされます。

 以前、このセミナーを実施した際に、付録のチェックリストにおいても触れておきましたが、「会計監査人の変更」は、投資家にとって必ずチェックしなければならない要注意事項です。
 会計監査人の変更が典型的になされるケースとしては、企業と会計監査人の間で「会計処理方法等に関する見解の相違」があり、この相違が埋まらないことから(もう少し言うと、会計監査人の指導に会社がどうしても従えないことから)、会社見解を概ね受け入れてくれるような、やや柔軟な見解を持つ監査法人に変更するということが想定されます(これを業界用語では、「オピニオンショッピング」と言います)。
 特に、定時株主総会のタイミングではなく、会計年度の途中に突然、会計監査人の変更がなされるような場合には、たとえプレスリリースで「監査コストが高すぎるために監査法人を変更した」と書かれていたとしても、このオピニオンショッピングの疑いがますます高まるわけです(もしかすると、会計監査人側のやんごとなき事情から、当該クライアントとお別れしたいために、わざと高額な報酬を提示しているのかもしれませんが・・・)。

 日々景気が悪化する中で、どの企業も期初に発表した業績目標の達成に苦しんでいるわけですが、とりわけ、過去数年の「大公開時代」に上場した、経営基盤が脆弱な新興企業にとっては、「会社が存続できるか否か」の瀬戸際まで既に追い込まれているところも多数あるわけです。このような企業にとっては、何が何でも利益を創出しようとして、かなり無理のある積極的な会計処理(創造的な会計処理?)を採用してみたり、継続企業の前提を付記させられることを回避するために、ありとあらゆる工作活動をしてみたりする可能性が高まるわけです。

 そうなりますと、また1社、また1社と会計監査人が企業とお別れすることになり、新たな会計監査人探しに奔走する「監査難民予備軍企業」が発生することになります。この「監査難民予備軍企業」にとって、上場の維持は死活問題ですから、継続性の疑義ありなどの限定付きでも良いので「適正意見」を出してくれそうな「リスクテイカー会計監査人」を見つけてくる必要が生じます。

 ここに「リスクテイカー会計監査人」という駆け込み寺のニーズが生まれるわけで、現実問題として、各監査法人別のクライアントリストなどを見ると、「よくまあ、これだけ香ばしい銘柄を集めたなあ」と思われる監査法人様もいるような気が致します。

 問題は、この「リスクテイカー会計監査人」の立場です。確かに昨今、こういった会計監査人のニーズはますます高まっており、通常の監査よりもクライアントの足元を見て、それなりに高い報酬がもらえるのかもしれません。また、実際「リスクテイカー会計監査人」の周辺でアルバイトなどをされている同業者に聞くと、「大手より監査経験がずっと豊富なベテラン会計士が、特定企業をじっくり担当するのだからむしろ安全性は高いし、逃げ時もわかる」などという声も耳にします。

 でも、そうは言っても、この「リスクテイカー会計監査人」の仕事は、もらえる報酬に限度がある一方で、そのダウンサイドのリスクは極めて大きいと思われます。
 万が一、自らが担当する企業、もしくは、同一監査法人の同僚が担当する企業に粉飾決算が発生し、これを見抜けなかったことに対して責任を負わされた場合には、当然、監督官庁からのお咎め(行政処分)があり、更には、株主などから、損害賠償請求を起こされるのは目に見えています。これに対する賠償責任は、従来からのパートナーシップ制をとっている限り、原則として無限連帯責任となります。また、現実問題として、このような不祥事を起こしたら、たとえ会計士資格の剥奪がなかったとしても、再び会計士の世界でご飯を食べていくのは、至難の業であるといえるでしょう。

 プロフェッショナルとしての「士業」である以上、その重い責任を回避するつもりは毛頭ありませんが、それにしてもこの「リスクテイカー会計監査人」の仕事は、まるでプットオプションの売りポジションのようで、わずか5〜10名程度の会計士が集まって構成される中小監査法人が請け負うには、あまりに条件的に厳しいような気がします。もし、今後、会計監査人への訴訟が頻発するようなことになれば、「監査難民予備軍企業」に会計監査という市場インフラサービスを提供する担い手がいなくなってしまうのではないかということが懸念されます。

 やはり、明らかに事業の再生可能性が低い「ゾンビ企業」については、もう少し厳しい上場廃止ルールを定めて、早め早めに市場からの退出(M&Aなどによる救済を含む)を促す制度を構築してもらうことが、株主にとっても、会計監査人にとっても「大公開時代」の後処理として必要なのではないかと個人的には思っております。

| cpainvestor | 00:03 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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