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「海外で働けるスキル」<「ランチェスターの弱者戦略の実践」
  
   Awajishima

 渡辺千賀さんのこのエントリーがWeb上で話題を呼んでいるようですね。賛否両論多数のコメントがついていて興味深く読みました。
 「日本が下降曲線を描いている」というのは、誰しもなんとなく感じていることで、同意する部分は多いものの、「だから海外で働こう!」というロジックの飛躍に抵抗を持つ方が多い印象を受けました。

 私事で恐縮ですが、私の弟は、日本の高校を卒業後、単身で米国に渡り(その高校からは実質初めての海外大学直接進学で、インターネットや格安の斡旋業者もない時代、弟が苦労しながら情報収集していたのをよく思い出します)、米国のカレッジを卒業、苦学して大学の3年に編入して卒業した後、現地にて就職しました。弟は、10年近くを米国で過ごした後、なぜかフランス人の嫁さんを連れて3年前に日本に戻ってきて、現在は日本国内で英語力を生かした仕事をしています。その弟が、「アウェーで世界中の賢くてハングリーな奴らと競争し続けるのは、本当にしんどい。並の外国人が労働ビザに加えて現地の人間以上の待遇を勝ち取るのは、まず不可能に近い。ほとんどの日本人は、日系企業関連の仕事をすることで食いつないでいるのが現実。だから、日本がこのままシュリンクしてしまったら、多くの在外邦人が困るはず。結局、日本次第なんだよなあ。」と帰国直後につぶやいていたのを、このエントリーを読んで、急に思い出しました。

 イチローや松坂のように世界の頂点の舞台で現地のプロフェッショナルを相手に競争を勝ち抜ける日本人などというのは、本当にわずか一握りでしょう。欧米で活躍する多くの日本人は、私の弟の言うように、日本に関連する業務に携わって「英語/日本語遣い」として生きている方が多いのではないでしょうか。また、帰国した方々の中には、英語力を活用して海外の英語情報と国内の日本語情報の情報格差を埋めることで所得を得る、いわゆる「裁定取引担当者」として生きているというケースも多いのではないかと思います。(以下、こういうポジションで生きている方を「海外アービトラージャー」と言います。)
 この「海外アービトラージャー」というポジションは、江戸末期の蘭学者のポジションから脈々と続く立身出世の一つの勝ちパターンなのでしょう。特に戦後、日本経済が急速に発展する過程において、「海外アービトラージャー」の価値は大きく高まったように思います。
 ただ、残念ながら、今後、日本のプレゼンスが下がっていけばいくほど、この「海外アービトラージャー」も所得を得る機会が減っていくのかもしれませんし、「今の日本の状況がカナリヤバイ」と危機感を感じて、英語をコミュニケーションツールとして使いこなす日本人が増えれば増えるほど、「ただの英語屋さん」の付加価値は、コモディティ化していくことになります。だからこそ、最近のキャリア開発系の本を読むと、「英語+財務」とか「英語+IT」が必要とか言われていたりするのかもしれません。日本で英語を身につけるだけでも大変なのに、しんどい世の中になりました。(英語でしか高等教育を受けられない発展途上国の方々に言わせば、何を甘ったれたことを言っているのだと一蹴されそうですが・・・)

 ここから先は、異論反論もあるかと思いますが、私見です。

 若くて時間の機会費用が小さいうちであればあるほど、できるだけ、海外を見て多様な価値観に触れておいた方が良いと思いますし、あわよくば働く機会を得ておいた方が「サバイバル能力」を高める上では良いことなのだと思います。特に、オカネを払って勉強しにいくのではなく、オカネをもらって仕事をしに行く機会は、分野によってはものすごくしんどい武者修行かもしれませんが、何物にも代えがたい価値があるのではないかと思います(私自身も以前の職場では、毎年のように駐在希望を出していたものでした・・・)

 ただ、年齢が上がり、時間の機会費用が高まれば高まるほど、その意思決定は慎重にならざるを得ないような気もします。「海外で働けるスキルを身につける」ことを、「サバイバル能力を高める」という意味で考えるならば、私を含めた多くの凡人が、英語より先に学ぶべきなのは、「ランチェスターの弱者戦略(ウィキペディアの最適戦略を参照のこと)」であるように思います。
 「まだ日本経済が元気なうちに、競争相手が少ないニッチマーケットでできるだけ優位なポジションを築くことに精力を注ぎ、そのポジショニングと ある程度のバリュー消費の実践(やりすぎると生活の潤いがなくなります)によって(かつできれば夫婦2馬力で働くことで)蓄財に励み、これを元手にできるだけ若いうちから国内・海外にある程度リスクをとって分散投資をし続ける」という戦略の方が、より多くの人が取り組めそうな気がします。(これが私達の次の世代まで有効な戦略かどうかは微妙ですが・・・)

 現状では、日本の経済規模がまだまだ大きいことを考えると、重要なのは、できるだけ早く、どんな分野でも良いので、自分の競争優位性が少しでも発揮できるポジションを見つけるということに尽きるような気がします。英語+専門知識を身につけて、「雇われやすい人材」になったとしても、その結果、この方の言うような「決して我侭が許されないものすごく芸達者な飼い犬」をずっと続けているのであればあんまり意味がないような気が個人的にはします。

 私自身も語学を身につける重要性はひしひしと痛感しているつもりですが、それ以上に、「自分にとっての桶狭間がどこにあるのか」ということを日々考えながら過ごしております。

 皆さんもぜひ、サバイバル能力を高めるべく、まずは「ランチェスター戦略」から勉強なさることをオススメ致します。(筆者後日注、下記書籍はランチェスター戦略を中小企業の経営・マーケティング戦略に応用したものです。ランチェスター戦略については、Google検索で多数の解説サイトが出てきますので、そちらを参照してください。)

           

 追伸
 今日の写真は、播磨の国、舞子の浜から見た明石海峡と淡路島です。友人の結婚式で訪れたのですが、晴天と素晴らしい景色に恵まれたとても良い結婚式でした。Tさん、どうかお幸せに。
| cpainvestor | 23:09 | comments(13) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
えええ、これ明石海峡なんですか?サンフランシスコにそっくり、ちょっと驚きです。

cpainvestorさんらしい地に足のついたお考えです。私も「英語は使い続けるけど、便利使いされたくはない」という危機感はすごく強く、アービトラージをさけた結果として今の職場にいるはずなんですが、結局、「今までのキャリアの半分以上アメリカ」っていう私の色は消えないのを実感しています。ただ、周りに英語をある程度話せる人のほうが多いので、英語―日本語間のアービトラージ効果は幸か不幸かなく、「アメリカの組織をよくしっている」ことのほうが大きいかな、とは感じます。競争優位なポイントは、いくつかあってもいいですしね(結局はコンビネーションですよね)。

しかし、「芸達者な飼い犬」って恐ろしい表現ですね、わたしは絶対なってやらないとこの瞬間心に誓いましたよ(苦笑)。。。
Posted by: lat37n |at: 2009/05/10 12:36 AM
 昨日はお疲れ様でした。Tさんの結婚式で同席させていただいたOです。 
直接お話をしたかったのですが、人見知りなものでタイミングを逃してしまい後悔しています。

Kさんの横で話をきかせてもらっていたのですが、奥さんが作ってくれた料理にきちんと「美味しい。」と伝えるという事・普段から感謝を表すという事をcpainvestorさんが大事されていると知り、またあのテーブルの私が普段から尊敬している皆さんが深く共感していた事に凄く嬉しい気持ちになれました。

また機会がありましたら、今度は是非直接お話をきかせていただければと思います。
Posted by: kzk |at: 2009/05/11 12:09 AM
本を紹介いただき、ありがとうございます!

この本は師匠の代わりに私が書きました。本来はゴーストライターの立場だったのですが、幸運にも共著にして戴きました。

読者プレゼントのセミナー音声贈りますので、よければメール下さい。
Posted by: ベンチャー大学の栢野/かやの |at: 2009/05/11 9:52 PM
LAT37N様

コメントありがとうございます。

「芸達者な飼い犬」、そうはいっても、結構ドキッとされたのではないでしょうか(笑)。私もそうならないよう肝に銘じて、各所で組織への反抗の狼煙をあげております。

差別化って何かに突き抜けるだけでなく、「消しゴムつき鉛筆」みたいな形でもできるのだと思っています。何かと何かの組み合わせのパターンは沢山持っておいた方がいいですよね。

私はLAT37Nさんほど器用ではないので、もっと狭い「桶狭間」を探します。

行動あるのみの弟と違って石橋を叩いてしまうcpainvestorより



Posted by: cpainvestor |at: 2009/05/11 11:43 PM
kzk様

お隣のお隣に座っていたにも関わらず、お声がけせず、大変失礼致しました。

また、定例会等でお会いできることもあろうかと思いますので、その時は、是非声をかけて下さい。

今後ともどうぞよろしくお願い致します。

Posted by: cpainvestor |at: 2009/05/11 11:45 PM
栢野様

著者ご本人の登場、ありがとうございます!

私は上記書籍をはじめ、田岡先生や竹田先生の書籍でいろいろと勉強させて頂きました。

中小企業に限らず、個人のキャリア形成上の戦略としても、ランチェスター経営の発想は役に立つと思い、日々その応用を考えております。

リンク先のブログ、時々見させていただきます。(ベトナムの画像は、衝撃的でした。)

今後ともどうぞよろしくお願い致します。
Posted by: cpainvestor |at: 2009/05/11 11:59 PM
ご無沙汰してます^o^/

仰る通り、どれだけのスキルを身に付けたとしても、それで勝てる戦場がなければ、戦には負けてしまいます。

たとえレベル1の戦士でも、相手がスライムしかいない戦場だったら、生き残ることはできますからね。

僕もランチェスター戦略を学び、また、ランチェスター戦略を学んだ人から教えを乞うことで、僕自身の桶狭間を見つけつつあります。

個人的所見ですが、cpainvestorさんはcpaの中でも群を抜いて一人でもやっていける人だと思います!
おのちん様

ランチェスター戦略を生かして、元気でやっているようで何よりです。
この商売をやり続ける以上、「信頼」と「ブランド」は何より大事なものですから、安きに流れることなく、一歩一歩切磋琢磨してお互いがんばりましょう。

自分の足で立って商売をしているおのちん先生は、飼い犬の私よりずっと立派ですよ。



Posted by: cpainvestor |at: 2009/05/18 11:44 PM
芸達者な飼い犬!ほほっ。私もその一つだろうか?と思ってしまいました。
さてさて、投資でもしないとなと思っているのですが、今度教えてください。ん?
◆rita◆
Posted by: rita |at: 2009/06/07 12:30 PM
「芸達者な飼い犬」お互い、そうならないよう注意しましょう。
Posted by: cpainvestor |at: 2009/06/19 5:28 PM
お互い?いえいえ、cpainvestorさんはならないですよ。

先日、某師匠は、【不真面目な優等生】にはならないようにね。って、おっしゃってました。多分、同じです。反対語は【真面目な不良】でした。

◆rita◆
Posted by: rita |at: 2009/06/22 1:07 AM
はじめまして。

「海外 働く スキル」で検索してこのぺージにきました。

有益な情報、とてもわかりやすい文章、見やすく使いやすいホームページですね。

これから参考にさせていただきます!
Posted by: Yoko |at: 2010/05/23 7:45 PM
Yoko様

ご訪問ありがとうございます。
海外 働く スキルでヒットしましたか。なんか、うれしいです。

またのご訪問をお待ちしております。
Posted by: cpainvestor |at: 2010/06/07 9:28 PM








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