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コントラストの原理
 不動産仲介業者のセールステクニックとして、次のようなものがあるそうです。

まず家族構成、職業などを探りながらさりげなく予算を聞く。
次に「お客さんにぴったりのいい物件があるんですよ」と言って、予算内ではあるが、全く魅力的でない「セットアップ物件」を見せる。
そして「今度こそ、お客さんが気に入る物件のはずです」と言って、予算ギリギリの「そこそこ売りたい、奥さんが気に入りそうな物件」を見せる。たいていの顧客(特に家選びの主導権を握っている奥様)の目が輝く。
更に、「多少予算は超えるかもしれませんが、奥様にぴったりのとっておきの掘り出し物件がありますよ。昨日売り希望が出たばかりで、まだ店頭では案内していない物件です。」と言って、予算をやや超える値付けをした「本当に売りたい物件」を見せる。このとき、奥様の目の輝きは最高潮に達する。この瞬間を見計らって、「これはまだ、外に出していない物件です。本日中に決めていただければ、まだほとんど宣伝費等もかかっておりませんので、お客様のご予算+5%ぐらいでお譲りできるよう、売主と交渉してみます。」と言って、一気にクロージングをかける。

  先日紹介した書籍「影響力の武器(前回のエントリーを参照)」によれは、上記の例は、典型的な「コントラストの原理」を応用したセールステクニックです。ここで、「コントラストの原理」とは、「二番目に提示されるものが、最初に提示されるものとかなり異なっている場合、それが実際以上に最初のもの異なっていると錯覚してしまう人間心理」を言うそうです。

  まず最初に売る気のないボロ家を見せておいて、その後に同じ値段だと言って、前よりかなり魅力的な家を見せる、その大きなコントラストを利用して、まず、顧客の購買意欲を最高潮に高めるわけです。そして、顧客の気が大きくなったところで、やや予算オーバーですがと言って、ちょっと高値でプライシングした「とどめの物件」を見せる。既に数千万円の出費を覚悟している顧客にとって、今度は小さなコントラストに過ぎない数百万円の予算オーバーは気にならなくなるのです。

  こういった「コントラストの原理」の応用は、日常生活でそこかしこに見つけることができます。
  車のディーラーはまず、出費のかさむ車本体の購入を顧客に決断させておいてから、比較的金額が小さく見えるオプションをつけまくろうとします。結婚式場の料金設定なども同じ発想です。レンタル衣装のお色直しを花嫁に一体何回させれば、気が済むんでしょうか。
  また、「そこそこ綺麗な女性(そこそこいけてる男性)」が、あえて「まったく綺麗でない女性(まったくいけてない男性)」と組んで、合コンに出席するのも、成約率を高めるために編み出した「コントラストの原理」の応用と言えるかもしれません。


  投資においても、まったく同じような「コントラストの原理」による錯覚を受けてしまうことがあります。「2年前に比べるとウォッチしていた銘柄の予想PERが半分になった。これは割安だ、絶対買いだ!」という安易な発想で、私もずるずる下がり続ける銘柄をナンピン買いし続けて、何度痛い目にあったことかわかりません。

  株価は業績の先行指標であると言われています。今のような景気の下降局面と想定される状況においても、よほどの市況連動銘柄でない限り、2008年3月期の業績については、年度初めの超保守的な予想のおかげで達成することが可能な企業が多いはずです。その意味で、現在のように新興企業の株価が大きく下げている状況であれば、一見、「以前に比べて、予想PERがえらく割安」と思われる新興企業銘柄がゴロゴロしているように人間は錯覚します。

  ただ、もともと事業基盤の弱い新興企業は、きちんとビジネスモデルを構築しているほんの一握りの企業を除き、今後予想される景気後退にともなって、じわじわと業績が失速するはずです。単一事業であることが多い新興市場の成長企業では、業績面の失速兆候が出始めてからの、実際の失速度合いは、半端ではありません。期初の黒字予想から一転、大幅赤字の下方修正などということもザラに起こります。業績面での大幅な悪化が白日の下に晒された時には、株価は無残なまでに暴落していることが多いです。

  その意味で、景気後退局面での「安易なナンピン買い」がいかに危険かは、ITバブル後の低迷相場を肌で体験しているだけに、今回は慎重の上に慎重を期しています。もちろん、「人の買わない時に買う」という逆張り発想は投資家として極めて重要だとは思っていますが、それ以上に「買う銘柄は焦らず厳選すべし」と思うわけです。

まず純資産から見ても割安、できれば、キャッシュでの裏づけが欲しい
不況になってもリピート率が極めて高そうなストック型ビジネス

  私はまず、上記2条件を「譲れない条件」として、企業探索をしています。言ってみれば、今のタイミングは、ディフェンス重視です。皆さんも「コントラストの原理」による錯覚に騙されることなく、地道に手堅いビジネスを展開している不況抵抗銘柄を拾って下さい。また、日常生活においては、逆に「コントラストの原理」を味方につけて、人に見破られない、嫌われない程度に応用してみてください(笑)。


P.S.
  今日は、何年かぶりに母校のオーケストラの定期演奏会を聴きに行きました。技量的にはまだまだではありましたが、その一生懸命、かつ音楽を思い切って楽しんでいる後輩達の姿に大きな刺激を受けました。ドボルザークの新世界で右脳刺激をビンビンに受けてきて、久しぶりに楽器を手にとってみたくなりました。
| cpainvestor | 01:02 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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