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ウォシュレットはなぜもっと世界に普及しないのか?


 ここ数十年の日本のハイテク製品の中で、オリジナルの発明品として間違いなく世界に誇れるものとしては、何と言っても一番に、TOTOの「ウォシュレット」があげられるのではないでしょうか。私の家でももちろん愛用していますし、実家のトイレに設置してあげた時も「親孝行」だと両親から大変喜ばれたウォシュレットは、私の弟の嫁(フランス人)も「日本のハイテクトイレは本当にスバラシイ!」と大絶賛しております。

 聞くところによれば、ハリウッドの外国人スターからも大変人気があるといわれるウォシュレット、少なくとも一度利用すれば、毎日の生活に密接に関わるだけに、ハマる方も多いように思うのですが、その本家本元のTOTO(5332)の業績は、過去10年間、ぱっとしません(下図参照、棒グラフが純資産及び総資産、折れ線が売上高、経常利益、営業CF、投資CF)。

10年業績
 
 名門森村財閥が発祥のこの老舗企業、ウォシュレットの発明・普及と共に順調に業績を伸ばしているのかと思いきや、業績は07/3期を天井に下降線をたどり、経常利益率も05/3期の5.9%が最高で、その後は低迷、残念ながら投資魅力を感じるような業績ではありません。ウォシュレット関連の売上は、衛生陶器と共に会社の屋台骨を支える看板商品ではあるものの、全社売上(約4,600億円)の18%程度に留まっているようです(2009Factbookより)。
 
 地域別セグメント情報(下図、左軸:売上高、右軸:営業利益)を見てみるとよくわかるのですが、この会社、海外売上は1割程度しかなく、ほぼ完全なるドメスティック企業です。衛生陶器のシェアは60%、浴室も首位と国内では圧倒的に強いのですが、そうであるが故に国内の住宅着工件数等の落ち込みの影響をまともに受け、国内市場の成長が頭打ち、漸減となることで、国内営業利益も毎期落ち続けており、この落ち込みを海外増収分だけでは賄いきれていません。

地域別セグメント分析
 
 TOTOの中期計画などを読むと、「海外売上拡大」を次の成長の柱としていることは見て取れるのですが、いかんせん現状の海外売上のボリュームでは企業規模と比して小さすぎる上に、特に09/3期は、米国の住宅バブル崩壊の影響も受けたことで、海外分も大きく落ち込んでいます。

 せっかく「節水トイレ」と「ウォッシュレット」という強力な戦略製品を持っているのですから、中国などの新興国のみならず、北中米や欧州に有力な販路を持つ同業他社を買収するなり、提携するなりすれば、一気にこれらの製品を津々浦々に導入でき、グローバル企業として羽ばたけるようにも思うのですが、「そんな簡単に製品のリプレイスがきくような甘いマーケットではない」ということなのでしょうか。

 それから、「ウォシュレット」の良さは、「まずは使ってもらわないとわからない」ということがあると思います。その意味で、欧米の有力ホテルや公共施設の建設・改装などの際などに、激安価格で導入するなどというのも、徹底して認知度を高め、より一層の普及のためには有効であるように思うのですが、実際、海外の公共施設でTOTOのウォシュレットを見かけた方はいらっしゃるでしょうか?私は全く見かけたことがないのがとても残念です。

 もう少し関連業者を巻き込んで、マーケティングをうまくやって、トイレ工事の割賦販売・レンタルなどの仕組みを大々的に用いて初期コストのハードルを下げれば、欧米でも普及するように思うのですが、これは「清潔大好き素人日本人の勘違い発想」でしょうか。また、トイレ消臭剤や、洗浄水専用の消毒剤などの附属消耗品を開発して販売すれば、工事後も何らかのストック収入が計上でき、もう少し販売利益率も良くなるように思うのですが、実際はこれも難しいのですかね。

 TOTOのマーケティング関係者の方々には、トイレ川柳を募集して話題性を高めるアイデアマンもいらっしゃるようですから、せっかく良い製品をお持ちの今だからこそ、なんとかしてもう少し商売・マーケティング上手になって頂き、ウォシュレットを世界中に広めて、世界の方々の生活水準向上に貢献していって欲しいところです。

 私の素朴な疑問、ウォシュレットはなぜ普及しないのか?」に対する読者の皆様、特に海外在住経験者の方のご意見を募集しております。

参考記事:ウォシュレット開発ストーリー

| cpainvestor | 00:55 | comments(24) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
いつも興味深く拝見しております。

東海岸に四年半住んだことがあるのですが、やはりアメリカではそもそもトイレにお金をかける発想がなさそうに思います。どこに行ってもひどくゴツイ便器が多いです。

彼の地では手入れも荒そうなので、ご提案のような公共の場所などに設置するとすぐに壊されてしまいそうで、激安での試験サービスも難しそうな気がします。

最近は日本からの出張の際にはポータブルウオッシュレットを持って行く人も多いようですね。TOTO他の各社には何とか工夫して普及を進めてほしいところです。
Posted by: thorn1213 |at: 2009/06/25 10:56 AM
海外では日本と全く同じようには行かないでしょうが、おっしゃる通り魅力ある市場だと思います。

3年前、テニスの世界No.1(今はNo.2ですが)のフェデラーが初来日した時、ウォシュレットをえらく気に入って「買って持って帰りたい」と言っておりました。使えば外国人にも良さが分かるはずだと思います。
富裕層に売るだけでも結構なインパクトがありそうですね。
Posted by: Retriever |at: 2009/06/25 11:04 AM
各国の水事情は関係ありませんか?
Posted by: 通りすがり |at: 2009/06/25 3:43 PM
海外の水は日本のように軟水ではなくミネラルを多く含んだ硬水の地域が多く、
ウォシュレットのノズルにミネラル(ルシウムなど)が固まり詰まる可能性があると聞きました。

きっとメンテが大変なんじゃないでしょうか。
Posted by: 水草モス |at: 2009/06/26 11:19 PM
私が昔聞いたことがある話では米国では”おしり”に相当する単語を広告で使えないため。ということでしたが真偽のほどはわかりません。
Posted by: |at: 2009/06/28 12:12 AM
INAXががんばってるみたいですね。

アメリカン・スタンダード
http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55/e/d4d5dcb98ae8cd35968199b260318b04
Posted by: retroeater |at: 2009/06/28 9:05 PM
 皆様、コメントありがとうございます。

 ライバルのINAXの方が自前主義にこだわらず動いているようですね。

http://www.jsgc.co.jp/pdf/news_090518.pdf

 ただし、買収したのは、アジア・パシフィック部門のようですが。

thom1213様
 実体験に基づくコメントありがとうございます。そうですか。ポータブルウォシュレットなるものが普及しているのですか・・・。

retriever様
 テニスに限らず、海外有名人が絶賛してますよね。それだけでもセレブ需要はかなりあるはずですよね。

通りすがり&水草モス様
 確かに、水事情はありそうですが、硬水と軟水でそんなに違いますかね。それよりも水不足とか、水道管老朽化などの事情の方が深刻なのかもしれません(海外のホテルだと、よくシャワーが出にくかったりしますよね)。

お名前の書き残しのなかった?様
 私もググッてみましたが、確かに、CM等の制約はあるようですね。場所が場所だけにTVCMは難しいのかもしれません。

retroeater様
 情報ありがとうございます。ライバル企業のINAXのHPをチェックしてから原稿を書くべきだったかもしれませんね。モノがモノだけに、現地の水道工事会社などと濃い関係を築く必要性もあるのでしょうから、販路の買収は大きいでしょうね。TOTOさんも株価が下がっている今のうちに積極的にしかけてもらいたいものです。








 
Posted by: cpainvestor |at: 2009/06/28 10:05 PM
今日の日経新聞夕刊に、cpainvestor さんが顔写真入りで出ていますね。
思わず妻に、「この人と筑波に行ったんだよ」と自慢してしまいました。
セミナー頑張ってください。
(プライバシーに触れるようでしたら、このコメントを削除してください。)
Posted by: 投資ゲーマー |at: 2009/06/29 10:05 PM
我が家の外国人に聞いてみました。

一番大きいのは心理的障壁でしょう、とのこと。
おそらく一般人は聞いたことがないか、もしくは(場所が場所だけに)「日本にあるkinky goodsのひとつ(使用済下着を売っている自販機、ハイテク機能満載のラブホテルなど日本は変態グッズの宝庫というmythがあります)」としか見ていない。

使い方をマスターし、良さを実感するまでに時間がかかる(日本でも登場初期は、覗き込んで顔に水をかけた人とかいたと思います)ので、相当根気よく、しかも広範囲に営業しないと根付かないのではないか?とのことでした(ホテル一軒や二軒に入れたところで、広まらない)。

あとは、一番初めの人が言っているように、「トイレにお金をかける発想がない」のが大きいと思います。
Posted by: la dolce vita |at: 2009/06/30 12:31 PM
投資ゲーマー様

 見つかってしまいましたか。いやはやお恥ずかしい限りです。この講座はかなり「マニア向け」で、どうしようかと悩んでいたのですが、日経の担当者の方の「いや、これでいきましょう!」という一声で、開催が決まってしまいました。

 投資家フレンドリーな内容にしたいので、また、このブログでもそのうち告知したいと思っています。

 投資ゲーマーさんの「歴史ものブログ」ファンの私としましては、更新を楽しみにしております。

 また、お目にかかれるのを楽しみにしております。



Posted by: cpainvestor |at: 2009/07/02 1:07 AM
la doice vita様

海外在住、しかも外国人ダンナ様の率直なご意見を反映したコメント、ありがとうございます。

kinky goodsという扱いでは、普及に相当な時間がかかりそうですね。

INAXが米国の衛生陶器会社のアジアパシフィック部門の販社を買収したようですから、根気良く、オーストラリアやシンガポールにもセールスしていってもらいたいものです。

将来に渡って外貨を稼げる貴重な日本製ハイテク製品かもしれませんから。
Posted by: cpainvestor |at: 2009/07/02 1:12 AM
私の国では近くの韓国や中国でつくられたwashletが5,6万円で売られていました。
日本製のものはどうしても価格が高くなってしまうのでしょうか。。
Posted by: |at: 2009/07/27 3:17 PM
もうご覧になったかも、ですが、先週のThe EconomistにTOTO社長が記事になっていて、ウォッシュレットが普及しない理由も分析されていましたよ(↓)。
http://www.economist.com/people/displaystory.cfm?story_id=14082288

特にヨーロッパの部分は「そんな規制があるのかー」となかなか参考になります。
Posted by: la dolce vita |at: 2009/07/29 12:05 PM
la dolce vita様

 情報提供ありがとうございます。最近La dolce vitaさんの影響でEconomistの購読にチャレンジしはじめておりますが、この記事はまだ見ておりませんでした。Economist誌もとりあげるとは、存在感と注目度はあるということでしょうか。

 それにしても国ごとに水周り製品の規制が違うとか、トイレにコンセントがないとか、お国事情による障害はいろいろあるのですね。各国の公共施設等への導入もチャレンジしているようですので、地道にやっていくしかないということなのかもしれませんね。

 ただ、世界への普及率はともかく、利益率の低さは「商売そのもののやり方」のような気がしてならないのですが・・・。


Posted by: cpainvestor |at: 2009/08/02 12:32 AM
記事興味深く拝読しました。
ウォシュレットは今や日本の生活文化です。
且つ紙資源の節約と痔瘻など皮膚疾患の防止に貢献する点で時代の潮流を先読みしています。

日本がこれまで得意としてきた技術分野は中国など新興国の技術の追い上げと価格競争で窮地に立たされています。

しかし、日本の技術分野で世界になおアピールできるとすれば、世界の人がまだ経験していない、心地よい生活文化を背景にした技術でしょう。

日本食が生活習慣病予防の観点から、新興国を中心に今なお普及しつつあるのも、こうした二本独自の文化であって且つ時代の潮流に合致しているからでしょう。

ウォシュレットを世界に普及させる方法として私が考えたのは、先ず、ODAで金をばらまく代わりに、学校、病院、公共施設にウォシュレットを提供することです。将来のビジネスのタネを撒いておくことです。さらに、TOTOを始めとした日本の関連企業に事後のメンテナンスを斡旋して、事業の世界的拡大を後押しすることです。

お尻を洗う生活習慣を体験してもらうには、便座型のウォシュレットをサイショから提供する必要はありません。電池不要の携帯式ウォシュレットで十分です。電気や水道施設などのインフラが整っていない地域にとってはかえってこの方が良いかもしれません。

ウォシュレット無しでは生活できないといった経験をしてもらった上で、公共機関やホテルなどを対象に便座型のウォシュレットを提供し、その見返りとして提供先には、ネットなどで大いに宣伝してもらうことです。

飛行機の便座にも取りつけたらどうでしょうか?以前からなぜ無いのだろうと疑問でした。紙を節約できる点で航空会社にとってもメリットがあると思います。

子供手当みたいに将来の人材を期待する投資の仕方でなくて、将来のビジネスのタネを蒔く投資の仕方にカネを使うべきです。

ウォシュレットではありませんが、同じ発想では、ODAで日本独自のOS(トロン)を搭載し、手回しのゼンマイで発電/充電/駆動する100ドルのノートパソコンを日本のODAとして発展途上国の教育機関に無償提供するのも一案です。日本で開発した教育ツールや情報交換の為のソフトウェアを予めインストールしておきます。また、トロンで簡単にソフトウエアが開発できるキットも入れておきます。インフラを先ずは撒いて、その上に将来の人と技術を期待することが投資です。かつて日本が果たせなかった情報基盤の世界覇権に再度チャレンジするには、こういった無償の先行投資が不可欠でしょう。政治家はこういうことを考えて欲しいものです。

なお、ブログには英語で携帯型ウォシュレットについて説明してみました。
Posted by: Ristenpart |at: 2011/01/07 4:49 AM
Ristenpart様

古いエントリーへの有意義なコメント、ありがとうございます。

最近、家を新築しているのですが、TOTOのウォシュレットなしのトイレはありえないと改めて思っています。

世界各国に広がることを切に祈っております。
Posted by: cpainvestor |at: 2011/01/11 9:01 PM
最近海外(特に中国等)の高級ホテルでもウォシュレットを見かけるようになりました。しかし私は海外ではウォシュレットを使う気になれません。
ウォシュレットを使う最低限の条件として、そこに接続する水道水が飲めることだと考えています。
ウォシュレットを使うということはその水道水を少なからず自分の体内に取り込むことを意味します。その水道水が細菌、微生物、毒物に汚染されているとしたら・・・
事実、私は中国でウォシュレットを使った数時間後にひどい下痢に悩まされた経験があります。
こういうことからすると、海外でウォシュレットを適用できそうな地域は相当に限られてくると思います。
こんなことも海外で普及がすすまない一因かもしれません。

携帯ウォシュレットには煮沸した水道水の使用をお勧めします。
Posted by: gonta |at: 2011/12/06 11:23 PM
私は現在ブラジルに住んでいますが、此の3〜4年の間日本式便器が普及し2014年の ワールドカップ(サッカ-)及びオリンピックが 2016年ありますので ウォシュレットを P.Rをしたらどうでしょうか 私も無論 温水洗浄便座を使用しています。
  
Posted by: shinji yamaguchi |at: 2011/12/07 8:11 AM
私は現在ブラジルに住んでいますが、此の3〜4年の間日本式便器が普及し2014年の ワールドカップ(サッカ-)及びオリンピックが 2016年ありますので ウォシュレットを P.Rをしたらどうでしょうか 私も無論 温水洗浄便座を使用しています。
  
Posted by: shinji yamaguchi |at: 2011/12/07 8:12 AM
ハイテクトイレが普及しない理由。興味深く読ませていただきました。
普及しない理由としてトイレの値段が少なからず関係してるのではないか、と思います。日本のハイテクトイレはすでに、電化製品的な位置づけ。それに対し、従来のトイレは陶器製品であったりと電化製品的な位置づけでない気がします。
電化製品である以上、必然的にその価格は高くなります。ウォシュレットが発売されて以降、日本では普及しましたが、海外ではそこに莫大なお金を払う必要がないと判断された故に普及しないのかなと。いわゆる文化の違いでしょうね。

とはいうものの、前提として、普及しない理由=認知度が低いことが大きな要因ではあると思いますが・・・
Posted by: 通りすがり |at: 2011/12/14 8:04 PM
皆様

最新の状況のアップデイトや有意義なコメント、ありがとうございます。引き続き、たまに見にきて頂ければうれしいです。
Posted by: cpainvestor |at: 2011/12/30 2:40 AM
外国で普及しない最大の理由はコストパフォーマンスを無視した企画開発力の問題。テレビなど電化製品で韓国勢に負けているのと同じでは?シンプルな構造にして余分な機能を削ぎ落とし、使い勝手もよくして価格も半分以下に抑える努力が必須。勿論、簡単な工事で個人でも設置できるようにすることもポイント。生活文化を無視して思い込みも激しくガラパゴス化してませんか?
Posted by: fragrans6 |at: 2012/02/05 9:23 PM
イギリスに住んでいましたが、ウォシュレットがないのは苦痛でした。ぜひ普及して欲しと痛感したものです。 主な理由は水道のインフラが古く日本のように自分で簡単に取り付けられるようなトイレになっていないこと、トイレに電源がきていなく多くの場合電気工事が必要になることは障害かと個人的には感じました。 とはいえ一度使えばその良さは万国共通のはず。 まずは バッテリー駆動(充電式)、水はタンク式での簡易なウォシュレットでそのよさを広めてはどうかとは、個人的なアイディアです。
 
Posted by: blueskyandsea |at: 2012/08/26 11:58 AM
アメリカ人の夫を持つものです。彼はシャワートイレの大ファン。でも、一般的なアメリカ人(特に男性)にとって、お尻の穴に何かが触れるというのは、タブーなんです。だからなかなか受け入れられないのです。男性らしさが重要なアメリカ人男性たちは、表面には出さなくてもゲイを毛嫌いする気持ちが根底にはあるのです。
Posted by: バーギン |at: 2013/08/16 6:33 PM








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