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JALの窮境原因について考える(その4)


 前回の分析で、JALはANAに比べ、売上高に対して燃油費の負担が重く、原油価格高騰に伴って、これがJALのコスト面での大きな足かせとなっていることがわかりました。
 今回はこの燃油費の問題を売上高/燃油費(燃油費1円当たりで航空運送収入をどの程度獲得しているか)という指標に置き換えて分析をしていきたいと思います。

燃油費1円当たり旅客収入推移

JALの燃油費1円当たり航空運送収入は、ANAに比べて過去から一貫して低い
 まず、上図から、両社共に燃料費負担が収入に転嫁できず、年々そのコスト負担割合が増していることがわかります。更に、JALの燃油費1円当たり航空運送収入は、過去5年間、一貫してANAを下回っています。これはすなわち、一時期の為替予約や燃油サーチャージ設定の巧拙の問題などではなく、構造的にJALのサービスはANAに比べて燃料効率が悪いことを意味しています。これはなぜなのでしょうか。以下では、下図のような分析のフレームを用いて、この問題を掘り下げてみたいと思います。

燃油費分析フレーム

 上図フレームの意味は、JALの燃料効率の問題を、ー村漸堝単価(航空運送収入/旅客サービス提供キロ)、航空機の稼働率(旅客サービス提供キロ/座席数から算定される最大旅客サービスキロ)、G確組1円当たりで提供可能なキャパシティ(座席数から算定される最大旅客サービスキロ/燃油費)の3つに分けて考えようという趣旨です。
 下図は、この分析フレームに基づき、JAL、ANA両社のー村漸堝単価(右軸棒グラフ)、稼働率(左軸折れ線グラフ実線)、G確組1円当たりで提供可能キャパシティ(左軸折れ線グラフ点線)の3つの指標の推移をプロットしたものです。なお、旅客サービスキロ数(RPK)及び、座席数から算定される最大旅客キロ数(ASK)のデータは、JAL、ANA両社のHPにMonthly Reportとして開示されている数値を使用しています。

稼働単価、稼働率、燃油費1円当たり座席キロ数

JALは実質稼働単価と燃料費1円当たり提供可能なキロ数が低い
上図から以下のようなことが読み取れます。
 稼働単価(サービス単価)は過去から一貫してJALの方が低い
 国内線、国際線両サービスを合算した航空機稼働率は両社ほぼ同等
 燃料費1円当たりキャパシティ提供能力も過去から一貫してJALの方が低い

 
 結局のところ、JALは、,両莎劼鮗尊櫃鳳燭鵑任い觝櫃離ロ当たりサービス収入と、の燃料費1円当たりで提供可能なキャパシティがANAに比べて一貫して低いことが燃料効率が悪化をもらたしていると言えそうです。なお、このうち、燃料費1円当たりで提供可能なキャパシティの相違は、JALとANAの同規模の航空機の燃費効率そのものが異なるということなのかもしれません。(ANAの方が燃費効率の良い最新の航空機をより多く導入しているのかもしれません。他の理由が思いつく方はコメント頂ければ幸いです。)

 次の図は、上の_堝単価と航空機稼働率の推移を国際線、国内線別に区分して、表示したものです。


稼働単価:国際線<国内線、稼働率:国際線>国内線
 この図から、少なくとも以下の4点が読み取れそうです。(カッコ内はその意味するところの私なりの推測です)
 国際線のキロ当たり稼働単価は、国内線よりも一貫して低い。(国際線の方が国内線に比べて、航続距離が長い割にチケット代がそれほど高くないということ、あるいは各国航空会社との価格競争が激烈で、値下圧力が働きやすいことを反映?)
 国際線の稼働率は国内線の稼働率よりも一貫して高い。(国際線の方が、より稼働率を重視して路線を設定し、値決めを行い、機体を選定している?)
 稼働単価に関しては、国際線はJAL<ANAであり、国内線は、JAL>ANAである。(JALは、国内線に関しては高収入路線に特化できる半面、国際線では低収入路線も引き受けており、ANAは、国際線で高収入路線に特化できる半面、国内線では低収入路線も引き受けている?)
 国内線、国際線のサービス別稼働率そのものに関しては、共にJAL<ANAである。(両社が乗り入れている路線では必ずANAを選ぶ顧客が多いということなのか、それともANAの方が全体としては高稼働のドル箱路線を押さえている割合が高いということなのか?)

燃料単価↑→国際線打撃深刻化→経営悪化→座席稼働率低下→機体更新投資不可

 以上を総括するとJALの燃料効率の悪さの原因は、〇業分野の問題と経営努力の問題の2つに整理できそうです。
 事業分野の問題
 海外の航空会社との価格競争が激しい国際線は、実質2社独占の国内線に比べ旅客キロ当たりの航空運送収入がどうしても小さくなる。この結果、旅客キロ当たりの燃油費が高騰すればするほど、国際線主体のJALは国内線主体のANAに比べ収入に対する負担が大きくなる。
 経営努力の問題
 旅客の人数に関わらず、飛行機を飛ばせば必ず燃油費が発生するわけで、経営不振や事故等によるイメージ低下でJALの座席稼働率が低くなればなるほど、収入に対する燃油費の負担は重くなる。また、経営不振などで、低燃費の航空機への更新投資が遅れていればいるほど、燃料費高騰の負担は重くのしかかる。

 重要なことは、燃油費の高騰が続けば続くほど、多少は燃油サーチャージで補えたとしても、事業分野の問題からANAよりJALにより大きな打撃を与え、その結果、経営不振が続けば続くほど、座席稼働率は下がり、設備投資が抑制され、そのことが更なる経営悪化を招くという負のスパイラルが発生してしまっていることでしょうか。これに昨今の世界同時不況に伴う航空需要の急激な減少が加わったことで、JALは止めを刺された感じです。

 次回(最終回)では、これまでの分析を総括してJALの真の窮境原因と、そこから導かれる事業再生のための視点について考えてみたいと思います。(つづく

 

| cpainvestor | 00:12 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
JALとANAの同規模の航空機の燃費効率そのものが異なるということなのかもしれません。(ANAの方が燃費効率の良い最新の航空機をより多く導入しているのかもしれません。他の理由が思いつく方はコメント頂ければ幸いです。)

-->についてコメントします。
一般的に、このように解釈されていますが、それはJALが誘導しているからで、正しくありません。
JALのほうが燃費効率が悪く見える原因は、燃料の積みすぎによるものです。

航空機に搭載する燃料量は便ごこに異なりますが、法で定められている燃料量に加え、何かあったときのための余分な燃料を搭載します。これをExtra Fuelといいます。
これをJALは積みすぎるのです。

余分な燃料を積めば積むほど、重量が増え、燃費は悪くなります。

だから、なるべくExtra Fuelは搭載したくないのですが、JALの保守的な体質とパイロットの言いなりに燃料をどんどん積んでしまう業務方式を改めなければ、ANAのような燃料効率は実現できないでしょう。

Posted by: |at: 2009/09/14 4:09 PM
キロ当たり稼働単価について

航空業界では短距離多頻度運行のほうが収益性が高いこと、国際線の競争がより厳しいことが
国内線優位の原因かと。

稼働率について

国内線は日本の国土サイズでは夜間フライトの需要がなく機材を寝かすため稼働率は必然的に低くなります。
国際線は時差のおかげで24時間稼働可能であり、さらに昼間に空き時間があれば近距離国際線にも機材を投入するため稼働率が高くなります。

サービス別稼働率について

国内線は旧運輸省の政策でJALが幹線以外の就航を制限されていた時期が長かったため
自由化後も利用者に「○○行きはANA」のイメージが焼き付いている路線が多く
加えて近年ではJALを嫌ってANA指定の乗客も数多く存在しています。
国際線は後発のANAがナショナルフラッグキャリアの看板を背負わずにすんでいるため
路線の参入・撤退が柔軟にできるために結果として
おっしゃるように儲かる路線のみを飛べているからでしょう。
もうひとつ私的実感で根拠はないのですがアライアンスの影響も有りなのでは。
JALのワンワールドよりもANAのスターアライアンスでマイレージを貯める方が魅力的と考える利用者が多い気がします。
Posted by: shibapochi |at: 2009/09/15 1:59 AM
なるほど、Extra Fuelですか・・・。
気がつかなかった視点でした。
ご指摘ありがとうございます。

効率経営を考えた場合、パイロットの技量と燃料オペレーションは極めて重要なわけですね。

ただ、自分が乗る時には「燃料は積みすぎ」と言われるぐらい積んでいて欲しいとも思います(笑)。
Posted by: cpainvestor |at: 2009/09/17 8:17 PM
shibapochi様

詳細なコメント、ありがとうございます。おかげで私もより理解が深まりました。

一点だけ、ここで、私が定義している稼働率は、以下の算式で算定しています。

稼働率=RPK/ASK

ここで、ASKは、一定期間の実際の航空運送距離×客席数で計算されています。したがって、国際線が24時間稼動、国内線は昼間稼動といった問題では左右されず、むしろ、長距離船での空席割合の影響が大きいと考えられます。

もちろん、稼働率を一定期間の航空機稼働時間として捉えるならば、ご指摘のとおりのことが言えるように思います。

Posted by: cpainvestor |at: 2009/09/17 8:30 PM








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