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夏休みの読書


 ブログだいぶご無沙汰しておりました。
 8月に入り、仕事の方はかなりペースダウンして、富士五湖方面に数日の家族旅行や帰省をするなど、ここまで家族サービスに徹した夏休みを過ごしてまいりました。毎日のように子供達を市営プールに連れていき遊ばせたことで、妻の機嫌はすこぶる良好、父親株も急上昇した今日この頃です。

 夏の読書もこのような時しか読めない大作をということで、「坂の上の雲」を読了しました。司馬遼太郎作品は、「竜馬がゆく」や「燃えよ剣」など、高校大学の時分に父親の書架から拝借して多数読んでおりましたが、この「坂の上の雲」だけは、「戦国や幕末ではなくて明治だしなあ・・・」と思いながら、手を出しておりませんでした。

 読了後の感想を書き出せばキリがないですが、まずは「圧巻」の一言でございました。史実の調査から執筆完了まで10年近くを要した労作であることをあとがきで知りましたが、司馬氏が全身全霊をかけて「人々はひたすら上を向き、坂の上の雲をめざして歩く明治の明るい日本」というものを描き出していたように思います。「家の身分や貧富に関係なく、一所懸命勉強さえすれば立身出世できる可能性が生まれた」という明治維新の衝撃が、この時代の庶民、特に若者に極めて大きな影響を及ぼし、植民地支配を免れた近代日本の活力の源泉になったということが、この小説を読んで改めて実感できました。

 「坂の上の雲」の記述によって、日露戦争の戦況の詳細を知った方は多いでしょうが、改めてこの戦争は常識的に考えれば無謀な挑戦であって、1年半という短期決戦で日本の戦況が有利なうちに講和に持ち込むことができたということ自体が奇跡に近い出来事であったということがよく理解できました。特に、それなりの艦隊規模と戦術戦略によって日本海海戦に完勝した海軍はともかく、火力で圧倒的に劣る陸軍の戦闘はこの時から困難を極めています。ロシア軍に比べ、戦地が近く、国民の祖国防衛意識が高く、当時の指揮官が優秀であったことが、薄氷の勝利をもたらしたといえそうです。当時は、幕末戊辰戦争以来の実戦経験抱負な優秀な指揮官と、陸軍士官学校、海軍兵学校出で留学経験もある秀才士官の組み合わせがうまくかみあったということなのでしょう。

 この後、陸海軍共に官僚化が進み、日露戦争の強烈な成功体験が足かせとなって「短期決戦主義」「大艦巨砲主義」「白兵銃剣主義」から脱却することができずに、日露戦争以上に無謀ともいえた太平洋戦争まで突き進んでいったのは、なんとも切ない限りです。1868年の明治維新以来、日露戦争までに約40年、日露戦争後太平洋戦争終戦までに約40年、まさに近代日本の折り返し地点に、この戦争はありました。

 猛烈サラリーマンで、過去の成功体験が豊富な社長さんほど、この「坂の上の雲」を推薦図書にあげることが多いとどこかで聞いたことがあります。確かに「富国強兵」という共通の目的のもと、お国と組織のために、個人の生活を犠牲にして最善を尽くすという「滅私奉公の精神」は日本人の心の琴線に触れる部分が大きいのかもしれません。
 ただ、私の場合はこの小説を読んで、上記のようなテーマよりもむしろ、組織をマネジメントしていく上での情報収集能力、戦略や戦術、指揮官の洞察力や決断力、人事といったものの重要性の方がより印象に残りました。
 もし、この部分にもっとフォーカスをするならば、奇跡的に成功した日露戦争のケースを学ぶより、負けるべくして負けた太平洋戦争のケースを扱ったものの方が学びは大きいようにも思います。その意味で「失敗の本質−日本軍の組織的研究(下図)」も「坂の上の雲」のような小説的な面白みはありませんが、多くのビジネスパーソンにとって今読んでも非常に学びの多い名著だと思いますので、まだお読みになられていなられていない方はぜひどうぞ。


                          

 

 

| cpainvestor | 01:51 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
ご無沙汰しております。
同じく戸部氏の「外務省革新派」
も是非。既読かもしれませんが。。。
Posted by: niko |at: 2010/08/17 10:16 PM
戦争話ですと、今年は終戦関連の番組がかなり多かったと思います。
やはり圧巻は池上さんのやったテレビ東京の番組でしょうか。

淡々と事実を伝えるNHK的な内容でしたが、日本の当初の快進撃を正確に伝えたのはテレビとしてはかなり珍しいと感じました。おそらくここをあまり報じないのは戦争肯定につながりかねないとの配慮があるのではと思います。

が、日本人は皆その後のぼろ負けを知っていますから、極端な快進撃は綱渡りの勝利でしかないと簡単に分かるわけで戦争肯定なんて意見にはならないと思いますし、同時にこれだけ勝てばそりゃ調子にも乗っちゃうだろうと思ったり。

ここらへんはもっと子供のうちから教えるべきだろうなあと思いますね。バブル崩壊の話と同じものを感じたりもしましたので、歴史に学ぶとはこういう事を言うのでは、とも思ったり。

最近はビジネス系の本ばかり読んでいたので、頭が固くなってきた感じがします。たまには歴史系も読んだほうが良いですね^^;
Posted by: ny |at: 2010/08/18 12:03 AM
niko様

外務省革新派、読んだことありませんでした。面白そうですたので、Amazonでクリックしておきました。

ご紹介ありがとうございます。
Posted by: cpainvestor |at: 2010/08/18 7:41 PM
ny様

いつもコメントありがとうございます。

 太平洋戦争緒戦の快進撃時もそうですが、旧日本陸軍では、恐ろしいほど補給ですとか兵站といったことが軽視されていますよね。

「それを考えていたら奇襲なんてできない」ということなのかもしれませんが、これでは前線の兵隊があまりにかわいそうです。

「桶狭間こそ奇襲戦法をとった織田信長ですが、それ以後の戦いでは、このような奇襲戦法は一切使わず、常に敵と互角もしくは上回る兵力を具備し、用意周到に戦闘を進めていた」という記述が坂の上の雲にありましたが、まったくそのとおりだと思いました。


Posted by: cpainvestor |at: 2010/08/18 7:48 PM








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