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毎日がきのこ日和

 
 「本当に9月に入ったのだろうか?」と疑ってしまうような残暑厳しい毎日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 先日、日経セミナーの講座資料作成のため、食品業界の会社の財務数値をじっくり見ていました。ロングセラーブランドを持つ食品会社は、どこも売上は安定しているものの、営業利益率は他産業と比べると今一つの印象を受けました。例えば食品業界のリーディングカンパニーと言われ、グローバルにビジネスを展開している味の素(2802)、ヤクルト(2267)、キッコーマン(2801)でさえ、その売上高営業利益率は各々5.5%、6.5%、7.4%にとどまっています。

 こうした中、業種分類上は水産・農林業に区分されていますが、エリンギ、シメジ、マイタケといったきのこ類を生産・販売するホクト(1379)の売上高営業利益率は19.3%もあり、食品会社としてはずば抜けています。ROEは12%、ROAも8%を超えるとなれば、「これは投資家のハシクレとして調べずにはいられない」と思い、本来の作業そっちのけで少し詳しく見てみることにしました。

<財務状況> (以下金額単位は百万円)
 まず、過去5年間の業績ですが、下図のとおり、少子高齢化をものともしない、まったく文句をつけようがない成長ぶりです。過去5年で売上高は3割増、営業利益に至ってはほぼ倍増しております。年々営業利益率が上昇傾向にある点も見逃せません。

 次に財政状態ですが、株主資本(黄色)と有形固定資産(深緑色)の大きさが目立ちます。きのこ生産は全て衛生管理の行き届いた専用工場で計画的に行われるようで、まるで財務基盤の盤石な優良製造業のようなバランスシートです。積極的な工場展開による設備投資を続けているためか、毎期BSのサイズは大きくなってはいますが、業績推移を見ると、決して無駄な投資をしているとは思えません。

<事業の特徴>
 
会社の沿革を見ると、昭和58年(1983年)に、きのこ総合研究所を設置して本格的なきのこの品種改良・大量栽培研究を始め、平成元年(1989年)にきのこセンター(専用工場)を設けて量産を開始しています。その後も、新品種開発や工場展開が続き、平成18年(2006年)にはアメリカ、平成20年(2008年)には台湾に進出を果たしています。また、平成17年(2005年)には、子会社ホクトメディカルを設立し、アガリクスやヤマブシタケといった健康食品事業も本格展開しています。長いきのこ研究の歴史の中で培われた新品種開発や大量栽培に関する技術は、多数の特許とも相まって、容易に他社が追随できない水準に達しているものと推測されます。

 ホクトのHPによれば、国内のきのこ市場の規模は約3,000億円あり、その生産量は年間を通じた大量栽培技術の確立と共に年々成長しているようです。そうした環境の下、ホクトは全国19拠点の専用工場(きのこセンター)から、鮮度の高いきのこを翌朝には量販店の店頭に並べられる配送網を確立しており、その生産量シェアはエリンギで40%、ブナシメジで33%、マイタケで24%と圧倒的です。まさに「毎日がきのこ日和」のキャッチフレーズにふさわしい業界No.1企業となっています。この業界の2位企業は、雪国まいたけ(1378)だと思われますが、その売上規模はホクトの約半分、営業利益は3割程度にとどまっています。

<事業のリスク>
 
ここまで簡単に見てきたところでは、文句のつけようのない優良企業に見えますが、リスクもいくつか挙げておいた方が良いでしょう。
 市況の変動
 
きのこ生産そのものは、専用工場による計画生産であるため、天候による生産量の増減等は起こりません。ただ、生鮮野菜相場の動向によってきのこ価格もある程度連動するとのことで、特にきのこの不需要期の春~夏の価格は秋~冬に比べ、大きく低下するとのことです。したがって業績も上期が悪く、下期が良いという形になります。この市況変動の状況によって、業績はかなりぶれるようです。
 市場の頭打ち・需給バランスの悪化
 
大量栽培技術を持ったいくつかの企業が新たな生産拠点を設けるほど、供給過剰懸念により商品価格は下落、収益性も低下する可能性があります。いくらきのこの生産量がここ数年、順調に伸びてきたとはいえ、少子高齢化が続く日本の国内市場はいずれ頭打ちになるでしょう。既に国内マーケットシェアの高いホクトはそれを見越して海外進出を果たしてはいますが、日本と同様に海外諸国がきのこを食するようになるかは未知数です。研究開発を続けているアガリクスや冬虫夏草などの健康食品市場は、ライバルも多く競争環境はそれなりに厳しそうです。
 経営ガバナンスの有効性
 ホクトの経営は、現在創業家出身の若社長が経営を担っているようです。現在の水野社長就任後も経営は順調ですが、創業家出身だけに、周りの経営陣がどの程度ガバナンスをきかせることができているかは、不明なところがあります。

<Valuation>
 2010年9月3日終値ベースで、PBRは1.43倍、来期予想PERは11.9倍、実績EV/EBITDAは5.2倍といったところでしょうか。さすがに好業績継続・好財務の優良企業だけあって、この市況の中でもなかなか良いお値段がついています。この株価水準での投資魅力の有無は、海外も含めた今後のきのこビジネスの成長可能性をどう見るか次第というところでしょうか。(株価の過去5年チャートはこちら

 これから本格的な「実りの秋」を迎え、きのこの最需要期が到来します。皆さんもスーパーでホクトのエリンギを見つけたら、「この会社、食品業界No.1のすごい優良企業だったんだな」という私の分析を思い出して購入して頂けたら幸いです。(このエントリー、ちと面白かったという方は、ぜひブックマークをお願いいたします。)

 なお、この分析は投資を勧誘するものではありません。株式投資は自己責任でお願いいたします。

| cpainvestor | 01:35 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
ホクトは毎年増配していたと思います。私も機をうかがっている銘柄の一つです。
北米・台湾への海外進出を行っていたように思います。
CPAさんのお立場から(自己資本充実に目が行きがち)なかなか言いにくいかもしれませんが、毎年増配や自社株買いを行う企業、という視線は今後、成熟化していくと一層重要になると思います。
米国では25年以上連続増配する企業が幾つもありますし、長期で保有すると受取配当だけで投資金額を回収できる企業もたくさんあります。
こういう観点が広がれば、長期的に株式を保有するインセンティブが個人や年金中心に働き、資本家も経営者もハッピーになれるのになあと思います。
ただし、増配を継続する努力は並みじゃないですが。
Posted by: gonchan |at: 2010/09/09 1:07 PM
gonchan様

 コメントありがとうございます。
 ご指摘のとおり、長期に渡って増配を続けるブルーチップ銘柄は、個人投資家にとって魅力的です。
 特に現在のような株安の時こそ、たたき売られている2流銘柄ではなく、歴史的な安値圏にある1流銘柄を拾うべきだと私自身は思っています。
 特に本業のあるサラリーマン投資家にとっては、あまり細かく業績をチェックしなくてもずっと持っていられる安心感というのは、とても魅力的だと思います。

 今年は未だ、マイナスのパフォーマンスから脱却できないcpainvestorより


Posted by: cpainvestor |at: 2010/09/12 11:36 PM
ホクトは素晴らしく将来性がありそうに思いました。

安定供給の難しい生鮮食品にあって、数少ない超安定供給可能な食品では無いでしょうか。天候や病気の心配もほぼゼロでしょうから、スーパーも安心です。
需要も国内は安定してるでしょうし、中国なら急激な伸びが期待できそうです。

アジア諸国への進出もがんばってほしいですね。国際的な食品企業に化けそうな気もします。

この利益率は栽培時にあまり光熱費がかからない事も影響しているようにも思います。キノコは暗闇で育てるようなので。同じく工場栽培している葉物野菜は光熱費が結構かかりそうです、

春夏の需要喚起に成功すれば現在の驚異的な利益率は操業度の向上でさらにアップさせられると思われます。なので、春・夏の食材と組み合わせたレシピを全国のスーパー・HP・CM・レシピサイト等で地道に提案していく事でじわじわと売上アップを狙う事は出来ると思います。

こういう企業の存在を知るとちょっと安心します。今後の成長に期待したいですね。
Posted by: ny |at: 2010/09/15 12:39 AM
ny様

いつも気づきの得られるコメントをありがとうございます。確かに、光熱費は、通常の野菜工場よりは、かからないのかもしれませんね。

農作物特有の天候条件に左右されない製品を作り出し、採算ラインにのせたことが、この会社の最大の強みだと思います。HPをみると、エリンギもヨーロッパから原種を持ち込み、改良に改良を重ねて、食べやすい食味にし、製品化したようです。

ぜひ、研究中のマツタケの製品化や、冬虫夏草の大規模量産化などもお願いしたいところです。

この会社の先行きは本当に楽しみですね。
Posted by: cpainvestor |at: 2010/09/18 9:28 PM








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