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「究極のアジフライ定食」にみる試供品マーケティングの妙


 先日、久しぶりに、「究極のアジフライ定食」で評判の京ばし松輪のランチに行ってきました。三浦半島の松輪漁港から直送した新鮮なアジ2匹をフライにして、ご飯、お味噌汁、小鉢をつけて1,200円で提供しています。さすがにTVや雑誌でよく紹介されるだけあって、一度は食べる価値がある美味な一品だと思います。

 ところで、このお店のランチのオペレーションを見ると、「高級飲食店経営のお試しマーケティングはかくあるべし」というお手本を見せられているようでいつも感心させられます。

看板メニューの一点集中、一度聞いたら忘れない絶妙なネーミング
 
お昼のランチは、「究極のアジフライ定食」一種類のみです。肉厚の新鮮なアジのフライを大根おろしとワサビ醤油で頂くのがこのお店の特徴です。アジと言うと、タイやヒラメと違ってそれほどの高級魚ではありませんので、客の期待値も食べる前からものすごく高いわけではありません。そこに、首都圏近郊の地場漁港との強力なコネクションを生かして調達した新鮮なアジを、丁寧に下ごしらえして揚げたてホクホクの一品として出せば、ほとんどの客の期待値を上回ることができます。「究極のアジフライ定食」という抜群のネーミングとあいまって、一度食べたら客の記憶に間違いなく焼きつきます。

物語を作り、希少性を煽る
 
毎日提供される「究極のアジフライ定食」は限定60食、11時半の開店前には、店前に客の長蛇の列ができ、開店から1時間、座席2回転で確実に売り切れます。これだけ次から次へと客が来ており、保存がきくはずのフライなのだから、大漁時に冷蔵なり冷凍しておいて、もっと数を出せば良いのにと素人考えでは思います。
 ところが、このお店は違います。「アジフライに適した大きさのアジは、漁獲数に限りがございます。しかも毎日の下準備の時間を考えると、大変申し訳ありませんが、お客様に美味しく出せるのはこの数が限界です。」という風に店内看板で物語として主張されると、客は納得し、しかも飢餓感を煽られます。皆、一食あたりわずか二匹のアジフライを食べることができることに、ものすごい有難味を感じるようになるわけです。

ランチの鉄則は徹底したローコストオペレーション
 
多くの飲食店の稼ぎ時は夜のディナーであって、ランチは新規顧客獲得のための認知度向上マーケティングの一手法に過ぎず、言わば「試供品」のような存在です。このお店は、メニューを一品に絞ることで調理人の負担を極力抑え、限定60食、強気に相席を迫ることで座席回転率を高め、昼の営業時間を極力短縮させてホールスタッフの負担も抑えています。その上、食材のアジも築地などを通さず、地場漁港からの直接調達しているわけですから、原価も相当に安く抑えられているでしょう。しかも、毎日売り切れ御免で、在庫ロスはありません。ついてに、店舗は地下にあって、たいして広くもないことから、家賃も近隣相場よりはかなりお安くなっていることでしょう。

 絶妙な試供品マーケティング
 このお店にとって、ランチ限定の「究極のアジフライ定食」というコンテンツは、まさに最小限のコストで最大限の認知効果をあげているすぐれた試供品と言えそうです。その上、アジフライ定食が提供されるまでの待ち時間には、客にコースメニューの紹介文などをじっくり読ませて、夜の来店を促しています。

 不景気の深刻化で消費者の財布のヒモは固いままです。このような経済環境の下で、比較的高いプライシングをしているモノやサービスほど、その購買の呼び水となる試供品の役割が重要だったりします。ところが、多くの企業で、本来売りたい自社のモノやサービスを単純に値下げして試供品にしてしまっている会社も少なくないような気がします。
 呼び水にすべき試供品はどんなものが良いのか、そこからどうやって本来売りたい商品やサービスの購買につなげるのか…「究極のアジフライ定食」はその一つのヒントを教えてくれているような気がします。

| cpainvestor | 01:05 | comments(5) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
 食べログのクチコミなども読んでみましたが、なぜここのアジフライがはやるのか、よくわかりませんでした。辛口評もずいぶんあります。
 少な目に提供することで限定販売品としての価値を醸し出しているだけのような気がしました。
 あ、自分では食べたことがありませんが。
Posted by: 乙川乙彦 |at: 2011/01/27 4:22 AM
アジフライ良いですねー。
ランチはさほど儲からない、と割り切っているようにも思いました。価格設定も場所柄とはいえランチとしてはやや高めな気も。
夜の価格からして、ランチに1200円以上払える人だけを対象に試供品効果を狙っているようにも思いました。
宣伝効果を考えるなら、行列ほど効果のあるものは無いですよね。

ぜんぜん違う話ですが、銀座近辺は土日の夜に早めに閉めるお店がすごい多いんですよね(歌舞伎観劇後の食事とかかなり選択肢が狭まる)。あんな高い場所で経営してるのにもったいないなあ〜、有効活用できないのかなあと余計なお世話ながらいつも思ってしまいます(このお店もなんと9時ラストオーダーで日祝は休み!)。
Posted by: ny |at: 2011/01/27 7:01 PM
乙川乙彦様

コメントありがとうございます。
アジフライに関しては、私個人としては、普通に美味しいと思います。(究極かどうかはわかりかねますが・・・)
味覚こそ、個人差が大きいので、人の評判を気にするより、まずは食べてみられることをオススメ致します。

ただ、私が今回コラムでとりあげたのは、ご指摘のとおり、このお店のランチのマーケティング戦略がかなり秀逸だと思ったからです。

ランチ客をできるだけ多くつかまえるべく、いたずらに多数のメニューを出しているお店も多いです。ところが、いつも同じ店でランチを食べる人が少ないことを考えたら、本当に美味しいものを日替わり定食一本で出しても良いのだと思います。

こういうお店を観察しているといろいろ面白いです。

Posted by: cpainvestor |at: 2011/01/31 11:56 PM
ny様

 いつもコメントありがとうございます。おっしゃるとおり、1,200円のプライシングには、潜在顧客の選別効果がありそうですね。よく考えられているお店だと思います。

 おっしゃるとおり、銀座、京橋界隈は土日は早々に閉まる店が多いですね。それでも、飲食店労働者の劣悪な労働環境を考えると、せめてこのエリアだけでも、「ゆっくり休んで下さい」と個人的には言いたくなります。

 海外に行くと、週末に閉店するのが当たり前のお店がたくさんあったりして、あらためて日本の過当競争、過剰労働について気づかされますよね。
 開いてなきゃ開いてないで、なんとかなるのに、皆でクビを締めているような気がします。


Posted by: cpainvestor |at: 2011/02/01 12:02 AM
「お試しマーケティング」だの「絶妙な試供品マーケティング」だのと、一般人には理解が難しい言い回しで、自分に酔っているだけのオナニー作文として楽しく読ませて頂きました。アジフライごときに1200円とは、「堀田栗」と呼ばれるタイプのお店でしょうかね。
Posted by: とおりすがり |at: 2011/08/24 7:55 PM








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