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「ダイソーが来たらすぐに逃げる」という発想は見習いたい


 今週某所で実施したセミナーでは、企業分析の題材として百円ショップをとりあげました。少子高齢化進む市場において国内小売業はどこも厳しいですが、100円ショップの業界に関しては、デフレ経済の追い風もあり、業界大手は規模拡大を続けています。

 この業界の圧倒的な1位はダイソー(直近年度の売上高約3,400億)で、その後を、九九プラス(約1,400億)、セリア(約800億)、キャンドゥ(約600億)、ワッツ(約400億)が追いかける構図となっています。
 「究極の薄利多売モデル」とも言える百円ショップの業界で、明らかに業界の弱者と言えそうな、ワッツ(2735)が毎期着実に利益を確保し、成長を続けているのは特筆に値します
 

 ワッツのIR説明会での社長のおもしろプレゼンの中で、私が特に気に入ったのが、「ローコスト出退店」というキーワードです。別業態の既存店舗を改装して自社店舗とすることで出店コストを抑える「居抜き出店」というのは、よく聞く話ですが、「出店時に退店コストを最小化することを考える」というのは、なかなか他の多店舗展開の業態では見られない発想です。
 ワッツの店舗は、町のスーパーの一角の天井にポップをつけ、什器を並べただけのような、70坪程度の小規模なものが中心です(筆者撮影画像参照)。居抜き出店が普通ですから、店舗内装にはほとんどお金をかけません。
 その上、出店前に、‖狹垢了の敷金償却をできるだけ少なくする、退去告知後、できるだけ早く退店できるオプションを獲得するといった交渉を家主と徹底的に行うようです。
 

ワッツの店舗

 

 ワッツがこのような「退店のしやすさ」をあらかじめおりこんでおくのは、ダイソーが来たらすぐに逃げるという彼らの会社の戦略を着実に実行するためであるそうです。
 
 ワッツの店舗は比較的小規模なもので、扱っている商品特性上、最大手のダイソーと客層がほとんどかぶります。このため品ぞろえ豊富なダイソーの大規模店舗が近くに出店してきた場合には、ワッツの店舗は、まずまちがいなく売上が激減し、競争に敗れることになります。

 ワッツのビジネスモデルの勝ちパターンは、業界大手が着目していない、アクセスが不便なショッピングセンターやスーパーの一角に、いち早く小規模な百円ショップを作って淡々と稼ぐことであり、業界のガリバー企業とガチンコで勝負するつもりは毛頭ないわけです。ですから、「毎年100店出店して、同時に50店閉める」ということを当然のように行って、利益を確保しています。

 ビジネスの世界では、商売がうまいライバルがいると、すぐにそのマネをしたくなりますし、皆が集まる魅力的な主戦場で、ガチンコの勝負をしたくなります。でも、自分が有する資源や能力を考えた場合、「あえて主戦場での勝負を避けて、ライバルがいない場所を探して生き残る」という努力の方が何十倍も大事な場面は、多々あるように思います。

 私もワッツのこの戦略を見習って、会計監査や国際会計基準、大規模M&Aといった会計士の主戦分野は避けて、「誰も来ない隙間」を探して生き残るスタイルをめざしたいと思います。
| cpainvestor | 23:22 | comments(13) | trackbacks(1) | pookmark |
Comment
会計士や弁護士はプロフェッショナルの矜持(プライド)があるので、知識の豊富さでガチンコ勝負したい方々が多いような印象があります。
Posted by: uk |at: 2012/05/25 12:38 AM
会計士はエキスパートですから、規模だけでは議論できないと思います。

むしろ、いかに専門性を磨くかだと思います。
Posted by: 2 |at: 2012/05/25 12:55 PM
「誰も来ない隙間」、大切な考えだと思います。

探すか、あるいは作り出すという発想も必要ですね。
Posted by: おのちん |at: 2012/05/25 1:40 PM
非常に興味深い記事で勉強になりました。
私も監査や会計コンサルはしない主義ですが、企業再生やM&Aの世界は、ビジネスと密接に関わり合いがあっており、会計士だけではなく、他の自称、他称プロフェッショナルも偽物が多いので、資格や会社のブランドだけでは、差別化できず、大手でない者にも参入する余地は大いにあります。
Posted by: 中村昌弘 |at: 2012/05/25 4:53 PM
なるほど、そんな考えもあるのですね・・・
Posted by: tks |at: 2012/05/25 5:18 PM
会社の戦略としてはありかもしれませんが、従業員は突然解雇されてしまうのでしょうか、、気の毒ですね。
Posted by: yuu |at: 2012/05/25 6:08 PM
これはすごい!ランチェスター弱者必勝の戦略であり、負ける戦はしない。ありがとうございます!
Posted by: 栢野克己 |at: 2012/05/25 9:54 PM
誰も来ない隙間素晴らしい思考ですね。私には、まだまだできない発想です
Posted by: 鈴木里枝 |at: 2012/05/25 10:04 PM
うちの近所のシルク(確かワッツ系ですよね)はダイソーどころか99が来たら速攻撤退した・・・
Posted by: shiki |at: 2012/05/25 10:20 PM
以前務めていた会社にも見習ってほしいね。
真正面からバカ正直に相手するから搦め手に弱い。
Posted by: nameless |at: 2012/05/26 12:28 AM
戦わなければ負ける事は無いわな。良い判断だと思います。
問題は逃げまわった先に、まだ場所があるかだね。海外に出るのかな?
Posted by: 通りすがり |at: 2012/05/26 10:56 AM
会計士としての本来の仕事を辞めて五年余、自分が探しているものは、コレだ!と思えた。同じ土俵で、ハンディ無しで闘おうとするからシンドイのだと…。規制ある処、必ず、コレをかい潜ろうとするニーズあるわけで…。
Posted by: 藤田秀孝 |at: 2012/05/26 11:12 PM
皆様

 多くのコメントありがとうございます。一つ一つのコメントにお返事できずすみません。

 誤解のないように加筆致しますが、ワッツはダイソーがきた場合のみ逃げるわけではなく、出店当初の見込み違いや、競合店の影響などで、店舗採算が悪化した場合には、躊躇せず閉店(損切り)できるよう、閉店コストを最小化し、着実にその戦略を実行しているということを伝えたかったわけです。

 また、いくつかのコメントで雇用の問題が指摘されていますが、まず、正社員は、基本本社管理要員か、エリアマネージャー、スーパーバイザーで、店舗はほとんどアルバイトのみで運営されています。したがって閉店をしたとしても、即、正社員の解雇はおきません。また、店舗にいるアルバイトも数人ですから、事前にある程度の説明をしておけば、あまり影響はないものと推測されます。

 「常にガチンコ勝負をするのではなく、自分が生き残れる場所を探す、もしくは創りだす」工夫として私はこの会社の戦略を見習いたいと思っています。
 専門知識を磨いて突き抜けても、販路を人や組織の看板に依存している限りは、専門家としてはまだまだ修行が足りないと思っています。
「ニッチ分野のデリバリー能力+独自販路」を日々考えています。

 



Posted by: cpainvestor |at: 2012/05/28 6:01 AM








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