ユダヤの国民性
(エルサレム旧市街 嘆きの壁:筆者撮影)
イスラエルという国家を考える場合、ユダヤの国民性というものを十分に理解する必要があるように思いました。現地の元政府高官の方から聞いた説明では、次の4つの特徴が挙げられておりました。
- マイノリティとしてのDNA
世界中に離散したユダヤ人は、子供の頃から母親に「マイノリティであるからこそ、集団の中で平等に扱われるためには、何かに秀でなければならない」と教わるそうです。学術、芸術など、「自分自身の力で生きていくための術」を幼少期から徹底して叩き込まれるわけです。世界における人口比0.2%のユダヤ民族が、ノーベル賞受賞者の2割以上を占めるというのも、単なる偶然ではないのだと思います。 - 移民国家としてのダイバーシティ
イスラエルは建国以来、世界中のユダヤ系移民を多数受け入れています。イスラエルにたどりついたユダヤ人は、どこの国の出身であっても、到着したその日から市民権を得て、ヘブライ語の集中講座を6か月間、生活給付金と共に受けられるそうです。その結果、母国語や文化的バックグラウンドが異なる多様なユダヤ人が同じ国内で暮らしていることになります。特に、近年のハイテク企業の興隆の背景には、ソ連崩壊後に受け入れた優秀なロシア系ユダヤ人とその子孫が大いに貢献しているとのことでした。
- 仮想敵国である隣人
イスラエルの人口は、8百万人であるのに対し、周辺を取り囲むアラブ諸国の人口は、3.7億人を超えています。彼らは国家の存続のため、「知恵は最大の武器」を合言葉に、科学技術を振興し、防衛産業を発達させ、徴兵制を敷いています。「全世界に同情されながら滅亡するよりも、たとえ全世界を敵に回してでも生き残る」という危機意識は、国民に広く浸透しています。高校を卒業したばかりの人間が、生死を分ける現場で日々判断し、活動しています。20代前半でこのような修羅場を国民の多数が経験する国は、それほど多くないはずです。軍隊時代の修羅場に比べれば、スタートアップの精神的ストレスはたいしたことはないのかもしれません。
- 常識や伝統を疑う価値観
「ユダヤ人が3人集まると4つ政党ができる」というくらい彼らは個性的で、上下の職位に関係なく率直に意見する文化が根付いています。たとえ軍隊であっても上官が判断を誤れば、部下は遠慮なく指摘をし、意見をする。「説明を受けたら質問をしないことの方が失礼」「常識といわれるものは常に疑ってかかる」こういった習慣が彼らには幼少期から身についているそうです。こういった文化的背景を持つ人々を部下に持つ上司は、日本人からすると相当マネジメントが難しいように感じますが、常に本音をぶつけ合う議論ができるからこそ、新しい創造的なアイデアも生まれ、それを実現するべく挑戦するという風土も育まれていくのでしょう。
徴兵制があり、若者が修羅場を経験するという意味では、韓国もよく似た境遇にあるわけですが、「失敗を恥とは思わないチャレンジ精神」という部分で、両国の精神性は大きく異なるのかもしれません。
イスラエルの場合、自分たちの親、祖父母の世代は、着の身着のままでイスラエルに渡ってきて、ゼロから砂漠を開墾したところからスタートしているわけです。この話を原点として考えると、事業の一つや二つ失敗したからといってめげることはないということでしょうか。
「失敗の履歴がないのは、挑戦していないとみなされる」「失敗の数が多いほど、経験豊富だということで評価が高まるケースが多い」、現地のベンチャーキャピタリストのこんな発言が、大変印象に残りました。
イスラエルには、ここまで記載したような「光」の部分もあれば、当然「陰」の部分もあるわけで、大変なカルチャーショックとすぐにはとても消化しきれない複雑な感情が沸き上がった内容の濃い旅でした。
私も中小企業者として、これまで以上に前のめりで挑戦していこうと思う大きな刺激をもらいましたし、もっと国際政治や宗教、社会の諸課題に関心を持たねばと思わされた1週間でした。
ただ、皆さんのイメージ以上にイスラエルは安全な国ですので、興味を持たれた方はぜひこの国を訪問して頂きたいと思います。
なお、旅の事前リーディングとして下記の書籍はとても参考になりましたので、ご紹介しておきます。
「アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか? 」
⇒ cpainvestor (01/08)
⇒ 田舎の会計士 (11/05)
⇒ りん (09/18)
⇒ cpainvestor (06/21)
⇒ よし (04/29)
⇒ cpainvestor (10/31)
⇒ こもロハス (10/14)
⇒ cpainvestor (08/30)
⇒ cpainvestor (08/30)
⇒ KAPPA (08/23)