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内部統制報告制度と四半期報告制度 (その2)
  (前回からの続きです)

  この「内部統制監査制度」と「四半期報告制度」、一見、全く別の独立した制度のように見えますが、実際には密接不可分の関係にあると思われます。

  会計監査人にしてみれば、四半期決算に関して、数日間でちょっと財務数値を分析して、CFOに質問したくらいで、「見た範囲でおかしなものはなかった」という内容のレビュー意見書を提出するというのは、ものすごく勇気のいる作業であると思います。いくら、「監査とレビューは保証のレベルが違う」と言い訳しても、第1四半期の数字を第2四半期以降に、より深い監査をしていく過程で誤りに気がついたからと言って修正したりしたら、3ヵ月毎の数字も出ているだけに、目立ちますし、ましてや、四半期レビュー報告書に「異常なし」としゃあしゃあと意見して、その直後に粉飾が勃発したりでもしたら、また、「監査法人は何をやっているのだ!」と言って、関係各方面から猛烈に叩かれるのは目に見えています。叩かれるだけならまだしも、相手の会社がとてつもなく世の中的に影響力のある会社だったりすると、監査法人そのものがつぶれちゃったりするわけです。
(余談ですが、まったくもって監査という仕事は、アップサイドは全く見込めないわりに、ダウンサイドははてしなく大きい、つらいビジネスとなってしまいました。先日お会いしたこの方が「期限の長いコールオプションの売りみたいな損益モデルのビジネスですね。」と言っていましたが、うまい例えだと思いました。ただ、コールオプションの売りよりつらいのは、クライアントと監査法人の間の「情報の非対称性」が大きいため、市場メカニズムが十分に働いておらず、リスクに見合ったフィーを請求できていないと思われることでしょうか。)

  こういう状況のもとで、会計監査人が「レビュー報告書」という新たなリスクを引き受ける際の、唯一の防波堤となるのが、「上場企業自身の財務報告にかかる内部統制の整備・運用」なわけです。会計監査人としては、四半期レビューというものすごく簡便な手続きで、お役所に提出する何らかの意見を出す以上、財務報告の適正性を担保するための会社の中の諸々の仕組み、いわゆる内部統制が整備・運用されていることが絶対条件となるわけです。これがきちんとしていない状況で、意見書を書けと言われても、不安で仕方がなくなります。その意味で、上場企業自身の四半期報告はともかく、会計監査人による四半期レビューを義務付けるためには、「内部統制報告制度」の導入が必須条件であったとも言えます。
  逆に言うと、「内部統制の整備」が実質的に遅れている会社、内部統制評価に関する意見に限定が付いてしまうような会社において、「四半期レビュー」の意見書を出さなくてはならない会計監査人は現実問題として存在するわけで、彼らはものすごくつらい状況に追い込まれるわけです。会計監査人なら誰でも、できることならそんなリスクはしょいこみたくないわけで、来年度以降、これまで以上に会計監査人の変更が頻繁に起こるかもしれません。投資家の皆さん、「会計監査人の変更」は、改めて要チェックです。

  それにしても、この二つの制度を導入することによる間接コストの増加は、企業の決算数値にかなりのインパクトをもたらすと思われます。特に経常利益が数億円程度のベンチャー企業にとって、この種の固定費の増大は、頭痛の種になるでしょう。「上場のコスト」はこれまで以上に、多くの中堅企業にとってずっしりとのしかかってくるはずです。
  この二つの制度導入によって、「投資家保護」という目的が少しでも達成に近づくように、私自身は「内部統制狂想曲」のサークルの外から、祈っております。(前にも書いたように、私自身は「内部統制報告制度」の実質的な効果には、かなり懐疑的なので、現在はこの手の実務からは距離を置いております。)

  このような環境のもとでは、今しばらく、IPOは逆風が続く一方、手っ取り早いバイアウトがこれまで以上に頻繁に起こるようになると思われます。私はそのように「風」を読んで、IPOからM&A関連業務に軸足を移してきたわけですが、実際はどうなることやら・・・。

  この連載、終わり
| cpainvestor | 00:15 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
こんにちは。その4月から始まる二本立てに容赦なく突入させられていく一人です(笑)
今は仕事を選べる立場にないので、研修やいろんな資料を読んだりして、まずは内部統制に備えていますが、本当に効果があるのだろうか?・・・とも感じつつ業務に取り組んでいます。
本社ではコンサルを入れたりしてそれなりの準備が整っている(ような気がする)のですが、支店に行くと全く書類がそろっていなかったりするのもよくあります。
現場一筋何十年という方が、若造会計士にアレ出せコレ出せと言われてものすごく戸惑っておられました。
導入の効果はこれから実証されていくのでしょうが、会計士側からすると非協力的だった会社が「じゃあ、内部統制に重要な欠陥がある」と書きますよ、と言うだけで協力的になるのだから、それだけでも効果があるのかもしれませんね。
Posted by: koratan |at: 2008/02/23 10:17 AM
koratan様

現場ならではのコメント、ありがとうございます。

是非、「内部統制に重要な欠陥がありますよ」というコメントはできるだけがまんして、「こういう風な仕組みを作って見える化したら、組織的な対応が可能になって、業務の属人化を防ぐことができますし、結果として不正リスクも抑制することができますよ」と言ってあげて下さい(笑)。
Posted by: cpainvestor |at: 2008/03/02 12:42 PM








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