Entry: main  << >>
契約どおりの仕事をするのが専門家ではない
  新しい組織に来て、違和感を感じることのひとつに、「尋常ではないレベルのコンプライアンスの厳しさ」というものがあります。看板があるからこそなせる業なのでしょうが、あまりに保守的過ぎて、古くからのお客様から、お小言を頂戴することも多い今日この頃です。
 
  いくらM&Aの調査業務は非定型業務が多いとはいえ、契約の一言一句まで、作業単価の高いプロジェクトマネージャーが何時間も使ってクライアント及び組織内のコンプライアンス部門とゴリゴリ交渉し続けていると、「この作業は付加価値を生んでいるのか」と思うことも多く、本当に消耗します。
 
  ただ、私自身、以前の組織で、貸倒を作ったり、危ない目にも何回か遭ってきたので「一定の手続きを踏むことの重要性、コールドアイの第三者が業務をチェックすることの重要性」については、十分に認識しているつもりです。

  でも、だからこそ、逆に思うのです。「どれだけ契約でヘッジしても、事故は起きるし、クレームは発生するし、訴えられるときは訴えられる。たからこそ、一番重要なのは、顧客の関心のありかを見極め、その期待をちょっと上回るレベルのサービスの品質なのだ」と。

  新しい組織の何人かの同僚の方々を見ていると、心配になることがあります。「まず、契約をがっちりと固めて、その契約に沿ったサービスをきちんと、しかもできるだけ効率的に行う」ということに関しては、とても優秀なのですが、契約外の内容について質問を受けると、とたんに、「それは契約外の作業ですから、特に分析していません」とあっさり言ってしまう方が普通にいらっしゃるのです。「これも大企業病なのではないか・・・」と私などは思ってしまいます。

  例えば、大企業の子会社がスピンオフされて売却されるようなM&A案件であれば、当然にスタンドアローン問題というのが発生します。スタンドアローン問題というのは、大企業の子会社だった企業が、外部資本の傘下となり、独立企業として経営されるようになると、これまでグループ内企業として受けてきた様々なメリットが受けられなくなることにより発生する様々な経営諸課題を指します。具体的には、グループ向けの売上が減少したり、資金支援サービスや間接業務のアウトソーシングサービスが受けられなくなったり、グループ集中購買によるコスト削減効果がなくなったり、そういったものです。

  たとえ、契約上は、調査対象企業の財務内容の調査だけを請け負っていたとしても、私の感覚からすれば、スピンオフにより当然に想定される諸課題などは、出来る限り指摘し、可能なものはその影響額も試算して、(契約にはないので、口頭などで)補足説明してあげるのが、「この分野の専門家としての当然の注意義務」だと思うのですが、残念ながら新しい組織では、そういう発想をお持ちでない方も多いようです。

  彼らは「契約書の内容は最低限度である」という発想をあまりお持ちでないようで、最初から調査範囲を契約どおりに絞り込んだ調査しか行っていないため、クライアントからの「飛び道具」のような質問には、全く対応できなくなるわけです。私から見ると、いくらコンプライアンスを強化して契約書を厳しくしても、現場の対応がこれでは、見ていて危なくて仕方ありません。

  なんだか、「子供を悪い友達とつきあわせないようにするため、親(本社)が心配して、私立中学から純粋培養で育てて見たら、(コンプライアンスを強化してみたら)、子供がお勉強はできるけれど、まともに社会生活が営めないひ弱な人間になってしまった(肩書きだけは立派だけど中身のない専門家ができてしまった)」というような感じでしょうか。

  過去に監査の現場のプロフェッショナリズムが落ちているというようなコラムを書いたことがあったように思いますが、M&Aの調査業務でも、マーケットの拡大が進むにつれ、多数の専門家がこの分野に参入するようになったことで、同じようなリスクが顕在化しているような気がしてなりません。

  すみません。今日は愚痴コラムでした。

  次回は逆に「顧客の期待を上回り過ぎてもいけない」ということについて、書きたいと思います。
| cpainvestor | 23:56 | comments(6) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
いつも楽しい記事をありがとうございます。
今回の件については、もしかしたらG.M.ワインバーグの「ライト、ついてますか」や「コンサルタントの秘密」、「コンサルタントの道具箱」あたりに解決策があるかもしれません。
ちょっと大きめの本屋に立ち寄られたときに目次や前書き、後書きだけでもチェックしてみてください。
Posted by: ramblelazy |at: 2008/03/19 1:10 AM
はじめまして!ちょくちょく読ませていただいてるのですが、コメントさせていただくは初めてです。次回の、「顧客の期待を上回り過ぎてもいけない」のコラム、楽しみにしています。仕事が戸建て住宅の設計で、顧客の期待を上げすぎて不必要(かどうかがわからないから問題)に社内で首をしめてしまったりしています。期待<結果のバランスでリピートを、みたいな意見をよく耳にする中、上回りすぎは…という話はおもしろいです!
Posted by: kiki |at: 2008/03/19 12:59 PM
こんにちは。
最近、コンプライアンスに執心しすぎて、企業が新しいことに挑戦する気概を失ってきている気がします。
これまで、自由な社風で高名であった日本の大企業が窮屈な職場になってしまい、「自分でリスクを取るくらいなら、様子をみておいた方が得。Googleみたいなストックオプション制度があればまだしも、リスクとリターンがバランスしない」という考えを持つ優秀な中堅層が多いと感じています。
まあ、オムロンの創業者が言っていたような意味での大企業病と言ってしまえば解釈は簡単なのですが、社会全体の問題として、どこに原因があるんだろうな〜とも感じています。
とはいえ、私が経営しているようなベンチャー企業にとっては大きなチャンスですので、何かしら日本の役に立つことをやっていきたいと思います。
まずは、第一弾で、インド市場への日本企業のビジネスモデル移管を手がける予定です。

それでは、また!!
Posted by: 渋谷のコンサルタント |at: 2008/03/19 3:24 PM
ramblelazy様

ワインバーグの書籍の紹介、ありがとうございます。早速、読んでみたいと思います。もうAmazonでクリックしました(笑)。
Posted by: cpainvestor |at: 2008/03/20 5:59 PM
kiki様

コメント、ありがとうございます。
投資の話題のみならず、私の書くビジネスの話題にも関心を寄せてくださる読者がいることをうれしく思います。新しい記事をアップしておきました。また、ご感想があれば、コメント下さい。
Posted by: cpainvestor |at: 2008/03/20 6:03 PM
渋谷のコンサルタント様

いつもご訪問ありがとうございます。「コンプライアンス不況」は、あるような気がしてなりません。

インドプロジェクト、楽しみにしています。
Posted by: cpainvestor |at: 2008/03/20 6:05 PM








Trackback

Calendar

  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< October 2019 >>

Profile

来訪者数(11/18/07より)

クリックで救える命がある。

経済・投資情報

Shops

Oisix(おいしっくす)/Okasix(おかしっくす)

過去の人気エントリー

Search

Entry

Comment

Trackback

Archives

Category

Link

Feed

Others

Mobile

qrcode