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「立ち位置」の重要性
 
  前々回に「顧客の期待値を上回るサービスの重要性」、前回に「顧客の期待そのものをマネジメントすることの重要性」について書きましたが、今日はその最終編として、「立ち位置(英語ではポジショニングとでも言うのでしょうか)の重要性」について書きたいと思います。

 前回に引続き、スポーツの例で恐縮ですが、サッカーJリーグが発足した頃のスター選手に、武田修宏というヴェルディ川崎の選手がいました。彼はヘディングや足技が特に優れているわけでもなく、フィジカル面で強かったという印象もないのですが、コーナーキックなどの際に、彼がファーサイドのポストの近くで待っていると、「こぼれ球が必ず転がってくるのではないか」と思わせるほど、いわゆる「ごっつぁんゴール」の多い選手だったと記憶しています。(詳細は、リンク先ウィキペディアのプレースタイルを参照のこと)

  彼のことを「ポジショニングだけで生きていたFW」と皮肉る声も多数ありますが、そのような批判をして、自分の実力を過信する人ほど、この「立ち位置(ポジショニング)の重要性」がわかっていないようにも思います。
  武田選手のようなタイプは、「守って守ってカウンター」のような弱者戦略を取るJリーグ下位チームでは、全く活躍できなかったように思います。ただ、当時リーグ最強の個性派タレント集団であったウェルディ川崎のようなチームでは、絶妙なポジショニングセンスを持ってさえいれば、自然と足元にお膳立てしたボールが来たわけです。そしてそれを「着実に決める」という能力に、彼は抜群に長けていた。(時々いますよね。キーパーと1対1の場面で、バーを大きく越えるシュートを打ってしますFWが。)だからこそ、彼は一生懸命に守備をしなくても、ゴールを量産することができ、その時の記録と名声で、今もサッカー解説者として活躍できているわけです。


  前回のコラムで、「コントロールと組立ての妙でうまくしのぐ」みたいなことを書きましたが、コメントにもあったように「打たれるとわかっている緩いカーブ」は投げられないわけです。その意味で「自分と相手との力関係」を常に意識しないと、このテクニックは使えません。すなわち、「コントロールと組立ての妙」と「顧客と自分との立ち位置において、現状どれだけ優位な場所に立てているか」という「立ち位置」の発想は常にセットで考えなくてはいけない問題であるといえます。

 このできるだけ優位な「立ち位置」を確保するために必要な要素は以下のようなものではないかと思っています。

情報優位性
  所属する集団や、顧客との関係においてより優位な「立ち位置」を確保するための要素として、「他者より多くの質の高い情報・ノウハウをどれだけ持っているか」ということが、極めて重要なのは、読者の皆さんにも理解してもらえるのではないかと思います。
  例えば、病院の医師並の専門知識を患者自身が持つなり、持てる仕組み(他の医師のセカンドオピニオン取得が無料で得られる仕組み)などがあれば、これまで以上に医療訴訟は増えるでしょう。その意味で、インターネットサイトなどによる医師の格安有料相談サイトなどがもっと増えてくれば、多くの医師にとってこれが脅威になり得るのではないでしょうか。「先生-患者」のそれぞれの「立ち位置」が崩れることにつながるからです。

コミュニケーション能力
  情報優位性とセットで考えるべき重要な能力に、コミュニケーション能力というのがあります。コミュニケーション能力の高い方は、属する組織の内外に人脈というネットワークを構築していますから、得られる情報のソースも多く、質も高くなります。いくらマス媒体やインターネットが発達した時代であるとは言え、本当に最先端の実務をやっている方から得られる一次情報の質には、かないません。「こういう分野ならこの人間」という方にどれだけアクセスできるチャネルを持っているかというのは、情報優位性を高め、結果として他者より優位な「立ち位置」を確保するために極めて重要な能力だと思います。
  時々「ただただ面倒見が良い」というのだけが取り柄の「人脈ネットワーカー」みたいな方にお会いすることがありますが、それはそれで突き抜けると凄い能力なのだと思います。

経済的優位性
  「力関係的にウチは大手に比べて弱いんだよね」という場合、その力関係の源泉になっているのは、「情報優位性」を除くと、その多くは「経済的優位性」にあるように思います。究極的には、「この仕事を断っても、痛くもかゆくもないような経済的基盤を既に備えているか」という問題です。大手と下請けの関係が限りなく上下関係に近いのは、大手にとっては、「この下請けが断っても、頼むところはたくさんある上、自分の経済的基盤が痛むことはほとんどない」のに対し、下請けにとっては、「この仕事がないと、明日から食っていけない」という切迫感があります。この経済的基盤の違いが弱者の譲歩を促し、結果「立ち位置」に大きく影響してきます。
  昔、師匠から、「専門家が賃貸用不動産を保有するというのは悪くない選択である」というようなことを聞いた記憶がありますが、これを聞いたとき、「なるほど!」と思いました。「個人の専門家サービス」というのは、基本的に時間の切り売りサービスですから、より仕事を選んで、高い単価を受け入れてくれる顧客へサービスを提供するように戦略的にシフトしていかない限り、いつまでたっても「長時間の業者労働」から解放されません。その意味で「仕事を断る勇気」、「値上げをする勇気」というのも、「立ち位置」改善のためには、極めて重要だったりします。例えば、経済的基盤が相対的に弱い個人事業者になったりすると、よほど気をつけないと、つい、先に予定が立つ仕事ばかりを優先して、単価の高い魅力的な顧客のオファーを断らざるを得ない状況が日常茶飯事的に起こります。こういった状況を打開し、仕事を選別できるポジションを築くためにも、「経済的基盤」というのは重要なのだと思います。(そもそも仕事が来る「販路」そのものがない状況では、選別も何もないわけではありますが、それは「そもそも個人事業者になって良かったのか」という、この議論より前の課題がクリアされていないわけです。)

ブランド戦略
  中身のあるなしに関わらず、ブランド戦略というのもまた、「立ち位置」確保のためには、重要だと思います。たとえ、同じようなコンテンツを専門サービスとして提供していても、組織なり個人なりにブランドがあると、何割か高い料金がとれたり、取引条件においてより優位な契約を締結できたりするといった利点があります。特に、いくつか同業のサービスを受けてみないことには比べようがないというサービス業の本源的な特性上、「信頼のブランド」というのは、特に顧客との「立ち位置」の構築上、抜群の価値を持つわけです。内容そのものではほとんど差別化できないようなコモディティサービスになればなるほど、この「ブランド価値の重要性」は顕著になります。
  そのような意味で、特に専門サービスを提供する元同僚などが、「組織内にいた時には、そんなに活躍していなかっただろ!」と思わず突っ込みを入れたくなるような経歴を著書に記載していたりしているケースを見かけますが、これも「パーソナルブランド戦略の一環である」と見れば、理解できる話しですし、賢いやり方なのだと思います。(私は昔の彼・彼女を知っているので、仕事は頼みませんが・・・)


  このように見てくると、「人生はポジショニングだ!」と叫んで、有望ベンチャー企業のCFOに収まり、見事IPOを果たして一攫千金をモノにした私の先輩会計士の意見は、ある意味、極めて本質的なものだと思います。また、最初から、自分の能力の限界を認めて、組織のブランドをうまく活用して高給を確保すべく、有名外資系企業の要職を転々とする「英語と調整能力だけ」の石田三成型ローカルマネジメントの皆様の動きも、「極めて賢い戦略である」とも言えるわけです。

  そういう生き方が好きか嫌いかは別として、「立ち位置の良し悪し」というのは、常に頭に入れて意識しておかなくてはならないポイントなのだと思います。

  そういえば、今日、ご紹介した内容に近い、書籍を最近読みまして、それなりに面白かったので紹介しておきます。

          

  実にみもふたもないタイトルですが、書いてあることは、本質的で、組織の大船に乗っても、それを信用することなく、いつでも逃げ出せる救命ボートを探して、その中で泳ぎの練習をしてしまうような自分にとっては、考えさせられる内容でした。
| cpainvestor | 00:16 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
私も以前『勝ち馬に乗る!』を読んだことがあります。ちょっと極端な内容のような感じもしますが、物事の本質的な一面を捉えている面白い本だと思います。

勝ち馬に乗っかることだけを目指すのも、駄馬にまたがりつつ全力を尽くすことも、人ぞれぞれの生き方で、自己責任ということになるのでしょうが、自分にとって、どちらの生き方が向いているのかくらいは意識しておきたいなぁと思っています。
Posted by: Ito |at: 2008/03/27 11:43 PM
Ito様

ご無沙汰しております。リンク先時々見させてもらっています。

「勝ち馬に乗る」を読むと、「いかにもアメリカ的だな」とも思いますが、やはりある一面で本質的な指摘が多いんですよね。

ただ、「他力本願を謙虚に認めてしまう」という一面もあるのだとは思います。
Posted by: cpainvestor |at: 2008/03/29 1:28 AM








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