Entry: main  << >>
スプレッドシートそのものよりもその前提条件の検証にこそ価値がある
 
 お客様とのサービス内容と価格交渉に関する折衝をしていると、予算の関係からどうしても折り合えないことがあります。そのような時のお客様にとってのコスト削減のための打開策として、結果に大きな支障のない範囲で、調査対象の範囲を絞ったり、調査手続そのものを簡略化したり、お客様の方でできる作業はなるべくお客様の方でやってもらい、私達は口頭アドバイスに徹するというアイデアを提案することがあります。

 今現在私が本業として行っている財務調査業務との関係上、「企業価値評価業務を実施して頂けないか」という依頼を受けることも多いのですが、私の場合、それほど複雑な案件でなければ、なるべくこの手の業務は引き受けず、お客様自身にやってもらうようお願いすることが多くなっています。その理由は以下のような事情からです。

企業・事業への投資意思決定にあたって、価値算定業務は極めて重要な業務の一つであり、そのシミュレーションも含めて外部の専門家に丸投げしているようでは、投資に必要な「割安感・割高感」を直感的に理解する発想・ノウハウ等が当事者に身につかない可能性があること。
そもそも、組織内コンフリクト(自社グループ企業がお客様に対して監査サービスを提供している等)の関係で実施できない可能性があること
自分達が算出した数値は、「特定の前提条件に基づき試算した数値」であるにも関わらず、それが一人歩きして、いろいろな場面で、「会計士が算出した公正な価値算定結果」として転々流通して勝手に使われる可能性があること
リスク料込みとはいえ、価値算定作業の内容、アウトプットの割に、フィーの値段が割高だと思うことが多いこと。

 企業価値評価を専門にやっているチームの方々は、特にのリスクがあるのと、自分達の精緻なスプレッドシートに絶対の自信を持っているためか、かなり強気なサービス料金設定をしてくることが多いわけですが、私などは出てくるアウトプットを見るにつけ、「彼らがそんなに高尚なことをやっているのかなあ?」と思うことが多いです。(もちろん、企業同士が合併する際の合併比率などを算定するため使用する基礎数値などを中立的な第三者の意見として提示する場合や、配当優先条項などがついている特殊な株式などを評価する場合には、リスクや難易度が高いので値段が張るのは理解できます。)
 
 最近、企業価値評価の場面で、使用されることがかなり一般的になってきたDCF法などは、その手法について解説する書籍が多数出ており、少しファイナンスの知識を独学で勉強すれば、どんな方でも算定することができるようになります。その意味で、DCF法のロジックそのものは、事業投資などに関わる方々にしてみれば、既にコモディティとなっている知識だと思うのです。

 DCF法のスプレッドシートをマニアックに作りこむことを専門にしている方々の「職人魂」には、同業者として尊敬することはあるものの、「顧客受け」するかどうかは、別問題であったりもします。私自身は、スプレッドシートそのものよりも、想定されるビジネス上のリスク要因をどのように洗い出し、これを価値評価の前提条件にどのようにして織り込み、定量的に評価するかを顧客に分かりやすくアドバイスできることの方がずっと重要だと思っており、そのためにこそ、スプレッドシートの作り、特にビジネスモデリングの手法そのものを最低限理解しておく必要はあるのだとも思っています。ただ、最近感じるのですが、自分のところのスタッフも含めて、未だ「価値計算のスプレッドシートそのものに、ものすごい価値がある」と考えている同業者がかなり多いような気がしてなりません。

 私自身は価値計算シートそのものはリスク回避の観点からなるべく作りたくないですし、超マニアックなスプレッドシートを作りこむ根気も能力もないですが、価値計算プロセスを意識した財務調査を通じて、実践的なアドバイス業務は行っていきたいと思っています。そのために、DCF法に基づく企業価値評価を「意思決定当事者自身が使えるポピュラーな手法」としてこれまで以上に定着させたいと思っています。

 そんな思いもあって、昨年に引き続き、今年も日経ビジネススクールでの上記テーマの研修講師を引き受けています。「業務の必要上、もしくは、個人投資家としてのスキル向上?の観点から、DCF法を基礎からざっとマスターしてしまいたい」と思っている皆様がいらっしゃいましたら、是非、ご参加頂ければと思います。手を動かして頂く基礎的な演習が中心ですが、なるべく実務的な話も取り入れて解説していきたいと思っています。

 最後は宣伝になってしまい、すみません。
| cpainvestor | 21:57 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment








Trackback

Calendar

   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< March 2017 >>

Profile

来訪者数(11/18/07より)

クリックで救える命がある。

経済・投資情報


Shops

Oisix(おいしっくす)/Okasix(おかしっくす)

過去の人気エントリー

Search

Entry

Comment

Trackback

Archives

Category

Link

Feed

Others

Mobile

qrcode