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「不動産流動化」という罠 〜 アーバンコーポレイションの民事再生法申請 〜
  
  個人投資家にも人気のあった不動産流動化銘柄の雄、アーバンコーポレイション(東証1部:8868)が民事再生法を申請しました。この間、同じ不動産銘柄のゼファーの民事再生法申請について記載したばかりですが、負債総額255,832百万円は今年最大のようですので、また、簡単に分析しながら、とりあげてみたいと思います。

  有価証券報告書等からとれる財務数値トレンドは以下のとおりです。
アーバンコーポレーション 財務数値

  財務数値を見て頂ければわかるように、この会社、営業CFを全く稼げていませんので、破竹の勢いだったPL面での事業成長は、有利子負債の活用による物件仕入と、開発後案件の速やかな流動化(私募ファンドやREITなどへの物件売却とその先の投資家への資産、リスクの移転・小口化)によって支えられていました。

  サブプライム余波の後、物件売却の出口であった私募ファンドやREITへの金融機関からの融資がつかなくなったことにより、行き場を失った開発不動産が滞留在庫として急増します。その結果、会社は急激に資金繰りが行き詰ることとなり、最後は、怪しげな転換社債型新株引受権付社債の発行など、あの手この手で資金調達を模索しますが、万事休すといったところでしょうか。連結附属明細表によれば、平成20年6月、7月と立て続けに返済満期を迎える無担保社債が5,000百万円ずつあったようですから、今期に入ってからは、社長は資金繰りに忙殺されていたのではないでしょうか。

  不動産流動化によるバランスシートのスリム化などというと、なんだか、ものすごくすごそうな不動産金融テクノロジーを駆使したビジネスのように見えますが、結局は「バーチャルな買い手」を作っていただけで、事業リスクは構造的には企業外に移転していなかったということなのかもしれません。

アーバンコーポレーション 5年チャート

  それにしても、成長期待で買われていた株価の落ち方もむごいです。特に、平成20年7月7日の「七夕プレスリリース」には泣けてきます。以下一部引用します。

  主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ
当社の主要株主である筆頭株主に異動がありましたので、下記のとおりお知らせいたします。

1.異動が生じた経緯
  当社の筆頭株主である当社代表取締役社長房園博行が個人として金融機関9社に当社株式を担保提供していましたが、当該金融機関のうちの6社において担保権が実行され当社株式が売却されました。それに伴い、房園博行個人より主要株主である筆頭株主に該当しなくなったとの連絡が当社になされたことによるものです。当社は、房園博行個人を提出者とする大量保有に関する変更報告書を本日財務局に提出するとの連絡を受け、本件開示を行なうものです。
 
〜 一部省略 〜

5.代表取締役房園博行からのお詫びならびに報告
  当社株式を担保提供することになった経緯につきましては、個人としての金融商品への投資ならびに所有を目的とする不動産の取得のほか、一部ベンチャー企業への投資に伴い複数の金融機関より資金の融資を受けていました。しかしながら、当社株価の下落に伴い担保提供の追加が必要となり担保となる当社株式が増加しました。金融機関による担保権の行使に際し、可能な限り当社株式の売却を避けるための方策を模索しましたが、結果的に個人が保有する当社株式の売却という事態にいたりました。多くの株主の皆様にご迷惑をおかけすることとなり、心よりお詫び申し上げます。
  私自身反省すべきは反省し、初心に立ち返り、引き続き当社の社業発展のために誠心誠意努力を惜しまない所存であります。株主の皆様には、是非ご理解を賜り、引き続きよろしくお願い申し上げます。


 引用終わり


  破綻は、このプレスリリースから、約1ヵ月後であったことを考えると、なんとも皮肉です。
  
  不動産銘柄の倒産の連鎖はまだまだ、続きそうです。レバレッジの程度が低く生き残れそうなところは買いだとも思いますが、慎重な検討が必要でしょう。特にメインバンクとの関係が希薄で、過去、社債発行等により巨額の資金調達をしているような会社は要注意です。信用格付けが下がって、償還期限近くで社債の再発行ができなくなり、肩代わり融資も受けられなければ、交渉の余地なく、簡単に「突然死」します。
  今回は残念ながら、ゼファーのときと異なり、監査報告書に事業の継続性に関する警告はなく、クリーンオピニオンのままの「突然死」でした。

 8月14日追記
 倒産直前に発行した怪しげな転換社債型新株引受権付社債の顛末については、こちらのサイトや、こちらのサイトが詳しいようです。参考にして下さい。(それにしても実際に300億の資金が複雑なSWAP契約により分割調達にさせられていたなんて、投資家を欺くにもほどがありますね。)
| cpainvestor | 20:28 | comments(5) | trackbacks(1) | pookmark |
Comment
なんとも不思議でしょうがないです。

営業CFがマイナスの状態を、経営者は放置しておくものなのでしょうか。積極的な仕入・経営は否定されるものではありませんが、不動産業の特性として土地の価格が下がった時の対応というのは考えていなかったんでしょうかね。

売れ行きが鈍った場合、株価が下がって資金調達がしにくくなった場合、銀行融資が滞った場合、そしてそれが複合的に起こった場合、etc・・・。

資金繰りのオペレーションとして、経理や財務の人間がそれらの仕事をしていなかったのでしょうか。当座比率のような単純な数字ですらありえないほど低水準ですから、これはもう決算書が読める人なら初心者でも危ないと分かるレベルです。これを放置する経営者というのはちょっと考えられないのですが・・。

賃貸業なら日々のキャッシュインはかなり正確に読めるのでしょうけど、分譲や流動化ならそうは行かないでしょう。その状態でこれほど手元の現金が少なくしてしまったのですから、今回の破綻はサブプライムのせいでなく経営者の能力の問題でしょう。

利益や資産よりCFの方が株価との連動性が高いのは、CFの悪化は企業の利益・成長に悪影響を与える事が如実に現れている証拠だと思うのですが、そういった事は誰もアドバイスしなかったのでしょうか。

しかし、ホントに不思議です・・・。
Posted by: ny |at: 2008/08/14 6:15 PM
ny様

いつも、有意義なコメントをありがとうございます。

ny様のコメントに刺激されて、新しいエントリー(15日分)を書いてみました。ご一読頂ければと思います。
Posted by: cpainvestor |at: 2008/08/15 10:25 PM
こんにちわ。
いつも楽しく拝見させていただいております。

アーバンについては、突然死という形で表現されていらっしゃいましたが、リアルタイムで経過を見ておりました私からすれば、アーバンは全く「突然死」でなかったように見えます。

格付け機関による格下げ、また社長の持ち株担保強制売却、社長の自宅売却騒動、パリバのCB発行(ほぼ詐欺)など、ある程度のメッセージは発信されていたのではないかと思います。

そこでですが、不躾ながら質問させていただいてもよろしいですか?

信用格付けが下がるときというのは明確な何らかの基準やサインがあるものなのでしょうか?

今回のアーバンの件に限らず、スルガその他の件も、「突然死」というわけではなかったようですが、格下げから全て始まったかと思います。

また、アーバンとスルガにおいては、コンプライアンスの面で金融機関が貸し出しや貸しはがしをするために、格付け機関によってまずは格下げを実施させるよう働きかけたとも読み取れるのですが、そちらに関してはいかが思われますか?


もしよろしければご意見お聞かせいただけますと幸いです。
Posted by: |at: 2008/08/21 5:13 PM
コメントありがとうございます。

残念ながら、私も格付け会社の実務に関しては、私もそれほど詳しくはありません。

ただ、格付け機関にとってその独立性確保は死活問題でしょうから、金融機関からの働きかけが、格下げするきっかけとなるというのは、まず、ありえないと思います。

格付け機関も、丹念な開示情報のフォローが仕事の基本なのではないかと思います。

各社とも特に財務面、その他定性面で多くの尺度を持っていて、その尺度に触れる事項がいくつか出てくると、Warning対象となり、格付け変更を検討し始める。そういったシステマチックな流れになっているのではないかと推測します。
会計監査人もそうですが、「継続企業の前提」など、そう簡単につけれるものではありません。格下げプロセスも慎重に慎重を期して、社内で検討の上なされるものと推測します。


あまりお答えになっておらず、すみません。
Posted by: cpainvestor |at: 2008/08/25 10:08 PM
こんにちわ。
格付けについて伺ったものです。
ご丁寧にお返事くださいましてありがとうございました。

cpainvestor様のブログを拝見し、いつも勉強させていただいております。

何もお返しできず申し訳ありませんが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by: |at: 2008/08/26 4:57 PM








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アーバンが民事再生法申請。 昨日の株ブログは久々に一色に染まった。 僕自身はアーバンには投資していないものの、未だアセットを持ち続...
○田×男(まるたばつお)の個人投資家・株ポータル | at: 2008/08/14 9:08 AM

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