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小手先の景気対策では、生産年齢人口の減少による内需縮小に全く対処できない


 久しぶりに、読み応えのある新書に出会いました。既にあちこちのサイトで紹介されている藻谷浩介著「デフレの正体 −経済は「人口の波」で動く− (角川oneテーマ21)」です。

 この書籍の内容を一言で表すとすれば、エントリータイトル通りとなるのですが、「団塊世代の大量退職によって今後生じる現役世代の急速な減少と高齢者の激増が、どれだけ極端な内需の縮小を招くか」ということが、国政調査などのデータをわかりやすい図表で見える化しながら、丁寧に論証されています。

 このブログでも都会と地方の経済格差に関してはいくつか記述してきたように思いますが、この書籍を読んで、「都会の方こそ今後は深刻な需要不足に陥る可能性が高い」ということがよくわかりました。地方から首都圏に集められた団塊世代が今まさに一斉に退職をしています。彼らは65歳を過ぎて年金所得がもらえるようになってもそれほど大きな消費はせず、将来の医療関連支出に備えてひたすら貯蓄を増やします。平均寿命が延びた親世代の遺産相続もこの世代に集中しますから、結局財産が死蔵されて消費は増えません。一方で消費意欲旺盛なはずの団塊ジュニア以下の若年世帯はどんどん所得が減少しています。著者の指摘するように、首都圏の内需の大幅縮小はより深刻で、むしろこれからが本番ということなのでしょう。それにしても、絶対額は別として、個人所得と小売販売額の伸び率がここ10年最も高いのが、沖縄戦のために老齢人口比率が小さく、高水準の出生率のおかげで人口も伸びている沖縄県だというのが、なんとも意外でした。

 書籍の2/3は、ひたすらに生産年齢人口減少→消費減少→供給過剰の過当競争→賃金下落→更なる内需縮小のデフレスパイラルがこれでもかというほど語られており、読み進めれば進めるほど暗くなります(もちろんデフレスパイラルの原因は他にも様々あるのでしょうが、著者の指摘も一つの原因であることは間違いないでしょう。)

 そして、最後の1/3になってようやく著者なりに「ではどうすればよいのか」という処方箋が、以下のように示されています。

 高齢富裕層から若者への所得移転
 女性の就労と経営参加
 労働者ではなく外国人観光客、短期定住者の受入

 いずれもよく言われる処方箋ではあるわけですが、特に△亘榲に待ったなしで進める必要があると思いました。著書にあった以下の図(p231より転載)は、「若年女性の就業率(X軸)と出生率(Y軸)が正の相関」にあることを明確に示しています。両者の因果関係は定かではありませんが、「夫婦共働きが当たり前」という環境を整えて若者世代の所得を少しでも底上げして消費を増やさないと、この国は本当に持たなくなりそうです。

     女性就業率と出生率.jpg

  も国が住宅資金贈与の促進などを政策で進めていますが、その行き先も高齢世帯というのではあまり意味がありません。高齢者から若年世代への所得移転をもっと積極的に促すには、もう人為的にインフレを起こすしかないのかもしれません。

 誰もが入手できるデータを使って、ここまでわかりやすく現状の日本経済の問題点を指摘している書籍はなかなかないように思いました。「製造業の海外移転などで、定型化しやすい低付加価値労働が海外流出し、雇用機会そのものが減ってしまっているという現状にどう対処すれば良いのか」というもうひとつの重要な問いへの処方箋が十分に記載されていなかったのは残念ではありますが、「今年一押しの新書」という評判に誤りはないように思います。少なくとも、ここにある図表を丹念に追いかけて理解するだけでも700円のバリューは十分にあると思いますので、通勤時の読書の友に皆さんもどうぞ。

| cpainvestor | 22:22 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
夏休みの読書


 ブログだいぶご無沙汰しておりました。
 8月に入り、仕事の方はかなりペースダウンして、富士五湖方面に数日の家族旅行や帰省をするなど、ここまで家族サービスに徹した夏休みを過ごしてまいりました。毎日のように子供達を市営プールに連れていき遊ばせたことで、妻の機嫌はすこぶる良好、父親株も急上昇した今日この頃です。

 夏の読書もこのような時しか読めない大作をということで、「坂の上の雲」を読了しました。司馬遼太郎作品は、「竜馬がゆく」や「燃えよ剣」など、高校大学の時分に父親の書架から拝借して多数読んでおりましたが、この「坂の上の雲」だけは、「戦国や幕末ではなくて明治だしなあ・・・」と思いながら、手を出しておりませんでした。

 読了後の感想を書き出せばキリがないですが、まずは「圧巻」の一言でございました。史実の調査から執筆完了まで10年近くを要した労作であることをあとがきで知りましたが、司馬氏が全身全霊をかけて「人々はひたすら上を向き、坂の上の雲をめざして歩く明治の明るい日本」というものを描き出していたように思います。「家の身分や貧富に関係なく、一所懸命勉強さえすれば立身出世できる可能性が生まれた」という明治維新の衝撃が、この時代の庶民、特に若者に極めて大きな影響を及ぼし、植民地支配を免れた近代日本の活力の源泉になったということが、この小説を読んで改めて実感できました。

 「坂の上の雲」の記述によって、日露戦争の戦況の詳細を知った方は多いでしょうが、改めてこの戦争は常識的に考えれば無謀な挑戦であって、1年半という短期決戦で日本の戦況が有利なうちに講和に持ち込むことができたということ自体が奇跡に近い出来事であったということがよく理解できました。特に、それなりの艦隊規模と戦術戦略によって日本海海戦に完勝した海軍はともかく、火力で圧倒的に劣る陸軍の戦闘はこの時から困難を極めています。ロシア軍に比べ、戦地が近く、国民の祖国防衛意識が高く、当時の指揮官が優秀であったことが、薄氷の勝利をもたらしたといえそうです。当時は、幕末戊辰戦争以来の実戦経験抱負な優秀な指揮官と、陸軍士官学校、海軍兵学校出で留学経験もある秀才士官の組み合わせがうまくかみあったということなのでしょう。

 この後、陸海軍共に官僚化が進み、日露戦争の強烈な成功体験が足かせとなって「短期決戦主義」「大艦巨砲主義」「白兵銃剣主義」から脱却することができずに、日露戦争以上に無謀ともいえた太平洋戦争まで突き進んでいったのは、なんとも切ない限りです。1868年の明治維新以来、日露戦争までに約40年、日露戦争後太平洋戦争終戦までに約40年、まさに近代日本の折り返し地点に、この戦争はありました。

 猛烈サラリーマンで、過去の成功体験が豊富な社長さんほど、この「坂の上の雲」を推薦図書にあげることが多いとどこかで聞いたことがあります。確かに「富国強兵」という共通の目的のもと、お国と組織のために、個人の生活を犠牲にして最善を尽くすという「滅私奉公の精神」は日本人の心の琴線に触れる部分が大きいのかもしれません。
 ただ、私の場合はこの小説を読んで、上記のようなテーマよりもむしろ、組織をマネジメントしていく上での情報収集能力、戦略や戦術、指揮官の洞察力や決断力、人事といったものの重要性の方がより印象に残りました。
 もし、この部分にもっとフォーカスをするならば、奇跡的に成功した日露戦争のケースを学ぶより、負けるべくして負けた太平洋戦争のケースを扱ったものの方が学びは大きいようにも思います。その意味で「失敗の本質−日本軍の組織的研究(下図)」も「坂の上の雲」のような小説的な面白みはありませんが、多くのビジネスパーソンにとって今読んでも非常に学びの多い名著だと思いますので、まだお読みになられていなられていない方はぜひどうぞ。


                          

 

 

| cpainvestor | 01:51 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
夏バテによる大ブレーキ


 今週は、不覚ながらも体調を崩し、いくつもの予定をキャンセルしてもらうこととなってしまいました。振り返ってみると、5月の連休前から時短勤務はなくなり、フル稼働を続けていたのですが、先週大きなセミナーの講演業務が終わったことでほっとしたのでしょうか。週末は子供達を近くのプールに連れて行き、目一杯遊ばせて、火曜日に気分新たに出勤したところ、午後から急に体がだるくなり全く動けなくなりました。お客様との打ち合わせをなんとかこなして早退し、そのまま昨晩まで、高熱に苦しみながら眠りこけました。だんだんと体に無理がきかなくなっているようで、今週の予定は全てキャンセル、大ブレーキとなりました。大きな仕事がキャンセルとなっていたこともあり、代役のきかない仕事がなかったことがせめてもの救いです。こういう時は組織のありがたみを痛感します。
 今朝あたりからようやく起き上がれるようになり、食欲も出てきましたが、未だ本調子にはほど遠い状況です。猛暑日が続いておりますので、皆さんもお気をつけ下さい。

 さて、大ブレーキがかかったことで、観念して久しぶりにゆっくり体を休ませ、今日は少し本を読む元気も出てきました。こういう時こそハードカバーに取り組もうと、すでにいくつかの投資ブログで取り上げられていた「富・戦争・叡智」(下図左)を読みました。世界恐慌から第二次大戦へという20世紀半ばの究極の状況下で、市場株価はどのように反応し、人々はいかにして「富の保全」をなし得たかということをテーマにあつかった書籍ですが、第二次大戦の欧州戦線での戦況や、その時の経済状況が詳述されていて、歴史マニアのわりに、あまりそちら方面に詳しくなかった私としては大変興味深い内容でした。この書籍を読んで、印象に残った内容をいくつか箇条書きにしておきます。

○偶然かもしれないが、1930年~40年代の各国の株式相場の転換点は、戦局の転換点を的確に表していたことが多い。
○ 戦勝国と敗戦国及び被占領国では、資産の保全度合いが全く異なり、敗戦国及び被占領国では、紙の資産(通貨・株式・債券等)は、いったんほとんど無価値化している。
○敗戦国並びに被占領国に属している場合、金や宝石、不動産所有は、紙の資産に比べると、ある程度資産価値を保全してはいたものの、目立つものはすぐに当局に没収され、決して常に安全であったとはいえない。
○外国(特にスイスなどの中立国)への預金なども、危機が迫ってからの対応では送金が難しくなる上、国外脱出時の助けにもならない。
○ 戦時下で物々交換の主役となり重宝がられたのは、食糧品、医薬品、衣料品(特に寒冷地において防寒機能が高いもの)、嗜好品(タバコ・酒)などであった。

 結局のところ、究極の状況下では、有形の財産などはあてにならず、当人が受けた教育、これまで獲得してきた知識・経験・技能・人脈・その他、身ぐるみはがされても残る無形の財産しか役に立たないということのようでした。確かにホロコーストを生き抜いたビクトール・E・フランクルも、「他の囚人より自分が収容所で優遇されることがあったとすれば、それは医者だったから」といった記述をその著書「夜と霧」(下図右、こちらを読まれていない方は必読かと思います。ホロコーストを扱った重い内容なので、心に余裕がある時に読まれることをお勧めします。)の中でしていたことを思い出します。

 「保全に迫られるほどの財産自体を持っていない自分には関係ない」と言ってしまえばそれまでかもしれません。ただ、「常に最悪の状況を想定した上で行動をする」というリスク管理の基本がどうあるべきなのかが、この本からは学べるような気がしました。例えば、財産の一部を金に投資して、資産保全をはかるにしても、現物を確保できないETFでは究極のヘッジにはならないことが、この本を読むとよくわかります。

 最後の章には、朝鮮戦争の記述がありますが、北朝鮮軍が突然侵攻してきた状況を読んでいると、「今もそのリスクは全く変わっていないどころか、むしろ高まっているのではないか」とさえ感じます。日本の自衛隊だけで日本国内を防衛できないのは明白なわけで、基地問題でこれ以上もめている状況ではないだろうと思うのは、私だけでしょうか。次期の主力戦闘機も早いところ決めて配備してもらいたいところです。

             

| cpainvestor | 19:54 | comments(3) | trackbacks(0) | pookmark |
スノー・ボール  ウォーレン・バフェット伝

                    

 私も「バリュー投資家」のハシクレとして、バフェットの伝記は読まねばならないということで、分厚いハードカバーの本を約3週間も持ち歩き続け、本日ようやく読破しました。以下、バフェットの人生について、記憶に残っている内容を中心に書き留めておきます。

<幼少〜青年期>
・父は下院議員、ネブラスカ州オマハでは知名度の高い比較的裕福な一家に生まれている。
・幼少期からビジネスやお金に関して並々ならぬ興味を持ち、学生時代から様々なビジネスを手がける才があり、株式投資も少年期から始めている。
・ 数字や確率に関する記憶力・洞察力はずば抜けており、成績も優秀。ただ、その「頭の良さ」から来る自信過剰もあってか、コミュニケーションはやや苦手で、リーダータイプでもない。
・ガールフレンドとのデートでもできる限り費用を節約するなど、筋金入りの「ケチ」であったことは間違いない。

<青年〜壮年期>
・ハーバード大のビジネススクールの入試面接に失敗して入学したコロンビア大のビジネススクールで投資家ベン・グレアムの教えを受けたことが大投資家への飛躍の最初のきっかけとなる。
・卒業後、しばらくたってグレアム・ニューマンの社員として雇われるチャンスを得て、ここでの丁稚奉公でグレアムの投資手法を徹底的に学んだのが第二のきっかけとなる。
・ グレアム・ニューマンの解散に伴い、オマハに帰って親しい仲間うちの資金だけを元手にバフェット・パートナーシップを始めたのが第三のきっかけとなる。
・バフェットの仕事は「投資」、趣味は「経済誌や企業の年次報告書を読むこと」であり、食事や服装などの生活全般は無頓着。億万長者になってからも、老齢期になるまでは、寄付や贅沢をすることを極端に嫌う。
・身の回りの世話に始まり、社会とのつながりやコミュニケーションは、全て妻となったスージーの内助の功の影響が大きい。この人がいなければ、バフェットは今のような社会に影響を与える人間味あふれる投資家には間違いなくなっていない。後年、この妻にも愛想をつかされる場面があるのは何とも皮肉。
・3人の子供がいるが、その幼少期の教育には無関心でほぼ妻任せ。子供達は、音楽家や農場主など、それなりの仕事をしてはいるが、どちらかと言えば、「お金を稼ぐ、もしくは事業を経営する」側ではなく、「専らお金を使う」側の人間として育っている印象を受ける。まあ、毎年10億円の贈与を受けていれば、あくせく働く必要はないわけですが。

<壮年〜老齢期>
・ コミュニケーション下手は、妻であるスージーや、ワシントンポストの社主キャサリン・グラハムとの交流を通じて徐々に改善されている。
・ 運用資産残高が増え、経済社会への影響力が増えるにつれ、「後ろ指を刺されない社会での立ち居振る舞い方」を、いくつも苦い経験をする中で、体得してきている。

 バフェット本人がまだ健在である状況で書かれた伝記であるため、かなり美化されている部分はあるでしょう。ただ、この伝記を読むと、彼は決して「神格化するべき人」ではなく、私達と同様、「欠けの多い生身の人」であることを実感できるように思います。それにしても、私は、バフェットのような「ドケチ」を生涯貫けないでしょうし、「子供との幼少期の家族生活はほぼ無視」というのもしたくはありません。ここまで一つのことに没頭し、突き詰めることができる人はそうそういないことだけは間違いないでしょう。


 続いて、肝心の投資スタイルについては、伝記の中からは断片的なことしかわかりませんでしたが、少しだけ気がついたことを書いておきます。

<投資スタイル>
・若い頃は、「シケモク投資」と称して、純資産価値割れのキャッシュリッチボロ会社の株を買占めた後、押しの一手で巨額の配当を出させるなり、自社株買いをさせるなど、経営陣からかなり反感を買いそうな手荒な投資をいくつも行っている。
・運用資産が大きくなり、上記のような手法が採用しづらくなってきたところで、「すばらしく良い事業資質を有する会社を高くない値段で買う」投資手法が得意なチャーリー・マンガーと組むようになった。彼の影響で、それまでの「シケモク投資」は、いわゆる「収益バリュー投資」へとそのスタイルが徐々に変わっていく。
・毎月継続収入があるガイコをはじめとした保険会社を買収することで、新規投資資金収入を継続的に確保する仕組みを構築。この資金を元手に株価の低迷時にせっせと株式への投資を積み増ししている。
・2008年の金融危機以前にも、LTCMの破綻時、ブラックマンデーなど、危機の際には、着実に「買い」に動いている。結局のところ、高レバレッジ経営でにっちもさっちもいかなくなった金融機関やファンドを尻目に、ギリギリまで温存していた現金を最大限に活用して、強気の「指値買い」を実践できていることが、これまでの最大の勝因であると推測される。

 バフェットの生きた時代が、米国経済の最大の発展期に当たり、彼の長期投資による運用成績は、そのサポートを受けてきたことは間違いないでしょう。ただ、元本の1/3程度の資産が一気に吹っ飛ぶような苦しい状況も乗り切って資産を増やし続けてきたことには、やはり「単なる統計上の外れ値」とは言えない「何か」があるようには感じました。

 伝記そのものが若干長すぎるきらいもありますが、「バリュー投資家」を目指す皆様であれば、バフェットの投資スタイルのみならず、彼の人生の歩みについても知っておいて損はないように思います。特に下巻は、ここ30年の米国の金融経済史と重なる部分が多いですので、その時点時点で、関係者がどのような決断を下してきたのか、その舞台の裏側を知るだけでも勉強になります。一応、「投資家向け」ということで推薦しておくことにします。
| cpainvestor | 01:23 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
最近読んだビジネス書2冊


 景気回復の影響が出始めているのか、私も年末から本業の方が非常に忙しくなってきました。今月は妻の出産があった日以外は、ここまで、ほとんど仕事ばかりの毎日です。(危うく父親失格の烙印を押されるところでした。今週末こそ子供達の遊び相手を十分に果たすつもりです。)
 プロジェクトの切り盛りや、セミナー講師などでアウトプットばかりしていると、「インプット枯渇の恐怖感」が頭をもたげてきます。今月は出張がいくつかあったおかげで、まとまった移動時間があり、何冊か新しい書籍に目を通すことができました。その中からオススメを2冊ほど紹介しておきます。

               

湯之上隆著「日本半導体敗戦」(上左)
 日立製作所の元半導体エンジニアで現在は大学の研究者として教鞭をとっておられる湯之上氏の著書です。さすがに業界内でエンジニアとしてキャリアを築いてきただけあって、そんじょそこらの経営学者が書いた薄っぺらな事例研究書籍より断然詳しく、日本の半導体産業が、台湾・韓国メーカーに敗れた要因について詳述されています。品質要求の極めて厳しい主要顧客(日系の完成品メーカー)の要望をとことん聞いているうちに、ほとんどの半導体量産設備が特注となり、その結果生じる割高な開発費、設備費負担が、日本の半導体メーカーの国際市場でのコスト競争力を殺ぐことにつながり、あっという間にシェアを失うこととなりました。まさに、半導体産業において、「イノベーションのジレンマ」が生じてしまった状況です。
老舗メーカーにおいて大事にされている「品質こそが競争力の源泉」という価値観は、時に、最終ユーザーから見れば「コスト高な過剰品質」となる危険性を秘めています。なかなか読み応えのある非常に面白い記述で、特に技術開発などをなさっているエンジニアの方にオススメしたい書籍です。

エリヤフ・ゴールドラット著「ザ・クリスタル・ボール」(上右)
 ご存知「ザ・ゴール」のゴールドラット博士の最新作です。今回は小売業におけるサプライチェーンマネジメントに関する基本的な考え方が紹介されています。相変わらず小説形式を利用したうまい手法でどんどん引き込まれ、主人公と共にサプライチェーンマネジメントの基本について学んでいくことができます。この書籍を読むと、なぜセブンイレブンはトラックが一日に何度も巡回配送するのか、また同一エリアに集中出店するのか、その理由もわかるようになります。小ロット、高頻度出荷を可能ならしめる倉庫の中のレイアウトの工夫など、私も知らない話が沢山出てきて非常に勉強にもなりました。ゴールドラット博士の一連の著作は、どれもハズレがなく、読む価値ありだと思います。(日本人の書いたTOC理論のパクリ本は、ほとんど意味がない気がしますが・・・)
 この書籍のような小説形式のビジネス書は、著者の筆力がいりますが、経営理論のコンセプトを理解するのに非常に便利です。今後この手のビジネス書が増えてくるのではないかと思います。



追伸
 JALはとうとう会社更生法申請によるリスタートと相成りました。「利害関係の調整が難しいのでは・・・」という昨秋の読みが当たってしまいましたね。京セラ稲盛会長が推奨する「アメーバ経営」のような採算管理意識が倒産後のJALに根付くかどうか・・・見物ではあります。

 昨年の私の分析をお読みになられてない読者はこちらからどうぞ。国際線全面撤退案がなぜ出てくるかがわかると思います。

| cpainvestor | 01:57 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
知っておかねばならない現実

 
 出張で長距離移動時間がありましたので、経済本を2冊ほど、読みました。

              
 
 1冊目は、松谷明彦著「2020年の日本人」(上左図)です。
 官僚出身の学者様らしく、マクロ経済データの丹念な分析から、2020年の日本経済の姿を予測しています。この著書の中にある多くのデータ分析図表を見て改めて痛感したのは、「日本の少子化のツケは莫大である」ということです。

     生産年齢人口/成人人口

 著書に記載のあった上図を見ると、日本の20歳以上の人口に占める生産年齢人口(20-64歳)の比率は、1970年代初頭(90%程度)から下がりはじめ、2050年には、50%近くまで一貫して下がり続けます。イギリスやフランスが2040年代には、70%弱で下げ止まるのと対照的です。現在の日本の人口構成から推測するに、移民の受入でもない限り、将来このような人口構成になることは、ほぼ間違いないのでしょう。だとすると、現行の世代間所得分配方式の年金制度がこのまま維持できないことは明白です。だからこそ、年金財源問題を討議する際に、いつも税方式、特に消費税による基礎年金財源の徴収ということが俎上にあがるわけですが、昨今の国家財政の大盤振る舞いを見ると、その実現可能性は、微妙です。「我々の世代の年金など全くあてにならない」というのは、今のところ真実でしょう。

 新聞報道などで今年の税収見込と各省の概算要求額合計の差などを見ると、そもそも財政赤字を歳出削減や増税によって縮小させることなど、誰も考えていないかのようです。財政の赤字はできる限り先送り、いよいよ国債が国内貯蓄で消化できなくなったら、最後は「通貨を刷りまくって国債購入、インフレでチャラ」か「超高率の相続財産課税でチャラ」という出口ぐらいしか素人の私には思いつきません。個人の生活防衛手段としては、以前にも書きましたが、「日本円だけで財産を持つのは極力避ける」ということぐらいしかないのかもしれません。 

 もう1冊は、池田信夫著「希望を捨てる勇気」(上右図)です。
 こちらは、アルファブロガーの著者がブログで記述している「日本経済論」が、きちんと整理されて1冊の書籍にまとめられています。池田信夫ブログの読者にとっては、目新しい内容がそれほど多くないことは残念ではあります。ただ、著者の意見の「70〜80%は私も同意」というのが、読後の率直な感想です。
 特に、派遣や請負などの非正規雇用制度の廃止や正社員労働者の過剰なまでの解雇規制が、かえって失業率を悪化させ、産業の空洞化を招いているという著者の主張は、そのとおりだと思いますし、実際に私が現場で仕事をしている中でも、それを裏付けるような事例にいくつも出くわしています。池田信夫ブログを特に通読されていないという皆さんで、マスコミ報道とは一味違った「日本経済論」を歯に衣着せぬ文章で読みたいという方にオススメの1冊かと思います。

 この手の本を2冊も一気に読むと、さすがに気分が少し滅入りました。そんな私と同じような感覚に陥った皆様には、新幹線の中で私が聴いていた村治佳織さんのニューアルバムをどうぞ。 なかなか良いです。  
                     

| cpainvestor | 01:21 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
消費者が思わず動く、心のホットボタン

コスモス畑


 不況の深刻化で、以前にも増してモノやサービスが売りにくくなっていることは、景況感に敏感な投資家の皆さんはもちろん、経営や営業の現場にいらっしゃる方々全てが実感されているのではないでしょうか。こうした状況を打開すべく、いくつもの企業が、前回コラムで分析したメガネのマーケットではありませんが、「そこそこ品質の良いものを値下げして大量に売るオペレーション」を確立することで、売上を確保する方向に動いている気がします。

 しかしながら、コメント欄でnyさんが指摘してくれているように、値下げは麻薬的な要素を持っているのもまた事実です。「薄利多売」は、「多売」をコンスタントに維持することができて初めて成立するため、一時期の消費者の「驚き」が剥げ落ちたり、競合他社が値下げで応戦したりすることで売れ行きが鈍ると、「薄利」にしてしまった分、以前にもまして経営は苦しくなり、更なる値下げ競争のスパイラルに陥る例も少なくありません。

 私が携わるBtoBの専門サービス業においても、人員の稼働率商売のようなところがあるため、競合他社のサービスの値下げ情報は多く耳にしますし、同一サービスへの投入人員の増やすことによる実質的な値引きは業界全体で横行しているように思います。
 また、通常業務の傍ら、日々顧客訪問も続けている身としては、顧客の要求するサービスレベルが格段に上がり、特定分野におけるこれまでの実績を聞かれることが多くなったことを実感します。より端的に言えば、若手スタッフを大量投入できるような単純な調査業務などは減少し、「当社の経営改善策を、あなた自身が我々と共に考え、提案・実行支援をして欲しい」系の難しい仕事だけが残っている感じです(泣)。

 最近、以下の書籍がきっかけで、「インサイト」という新しいマーケティング用語を知りました。「インサイト」というのは、「時には消費者自身も気付いていないような潜在ニーズをうまくくみ上げることで生まれる、顧客に行動を促すような心のホット・ボタン」のことを言うそうです。

                    

 リクルートが仕掛けたターミナル駅配布型の無料情報誌「R25」を手に取ったことのあるブログ読者の皆さんも多いのではないでしょうか。私も最初は「スポンサーの提灯記事やクーポンだらけの無料情報誌かな?」ぐらいに考えていましたが、実際に手にとってみると、意外に読み応えのある分かりやすい解説記事や、面白いコラムが多く、「若い男性が手持ち無沙汰な時の暇つぶしグッズには持ってこいだな」と思ったことを覚えています。実際、「R25」は、 このご時勢に50万部以上がコンスタントに出るお化け雑誌に成長しています。

 今日1冊目に紹介する書籍、藤井大輔著「R25のつくりかた(上図左)」は、この雑誌が誕生するまでの秘話が、元編集責任者である藤井氏の手により書かれていて、とても面白く読めました。当初は、「新聞や雑誌もロクに読まず、駅のティッシュ配りすら手を出さない若手男性世代(M1世代)向けの無料情報誌など成功するはずがない」と、立ち上げを任された藤井氏自身が思っていたそうです。ただ、そもそもこの企画をリクルート社内のコンテストに提出した若手スタッフから、「活字を読まず、誰も成功するはずがないと思っているM1世代向けのマス雑誌だからこそ、大きな潜在可能性があり、作る価値があるのでは」と説得され、「失敗してもともと、誰もやっていないことに挑戦するチャンスが巡ってくるなんて、そうそうあるもんじゃない」と思い直して、チャレンジすることにしたというのです。

 この書籍の中で繰り返し語られているのは、「M1層はリサーチをかけても、簡単に本音を語ってくれない」ということを前提に企画が練り上げられていったということです。
 そのために、毎号毎号、「リサーチ結果の奥に眠るM1世代の本音は何なのか?」を、企画編集のブレストで徹底して議論しています。「リサーチ結果を鵜呑みにしない」を旗印にこの手の企画会議を素人がやると、とかく声の大きいアイデアマンなり、上席者の意見が通りがちになったりします。このあたりの「企画会議の罠」に陥るのを回避すべく、著者は様々な仕掛けを会議にとりいれたそうですが、そのあたりの工夫は、著書をお読みになって確認された方が良いかと思います。

 著者の藤井氏がR25の立ち上げの中で貫いてきたマーケットイン思考は、まさに「インサイト」と呼べるものなのでしょうが、「単なる思いつきが当たった」だけなのか、「インサイトを見つけた」のかを区別するのは、素人にはなかなか難しいものがあります。

 そこで、本日2冊目に紹介する書籍、桶谷功著「インサイト(上図右)」を読んでみました。こちらの方は、高級プレミアムアイスクリームの市場を創った「ハーゲンダッツ」や、刃が横滑りしても肌を切らない「キレてなーい」のキャッチコピーで爆発的に売れたシックの安全剃刀の例を使って、この「インサイト」という概念について、もう少し一般化して書かれていました。いずれの事例も著者自身が実務で携わったプロジェクトだけあって、経営学者などが整理したものより、ずっと具体的で読みやすく、「インサイト」の重要性を改めて認識させられました。
 
 この本には、「インサイトの見つけ方・活かし方」という章もあり、「R25のつくりかた」を読んだ時よりは、その本質が理解できたようにも思います。ただ、このインサイトという概念を自分の実務の中でどう生かし、不況を打開するような「新サービス」の開発プロセスに落とし込むかは、未だイメージできておりません。この本に記載されていた「インサイトを見つけるためのスイッチ(以下に転載)」を参考に、自分なりにもう少し考えてみたいと思っています。

<インサイトを見つけるためのスイッチ>
準備編:アタマと気持ちをほぐす
○ リラックスする
○ 客観・理屈を捨てる
○ ゲーム感覚を持つ
○ 消費者に戻る
実践編:カラダと五感を使って体験してみる
○ ターゲットになりきって使ってみる
○ 売り場に行って買ってみる
○ ターゲットの集まる街に行く
○ トレンドを体験する
○ 関係ないジャンルの共通項を探る
○ 身近な人に聞く

 今日、ご紹介した2冊は、普段マーケティングから縁遠い職種の方々、日々、商品・サービスの売れ行きに悩んでいる方々に、よりオススメしたいと思います。普段気付かなかった新たな示唆をいくつか得られるのではないかと思います。

追伸
今日の写真は、連休中に子供達とお弁当を持って出かけた、近隣の野山のコスモス畑です。もうすっかり秋ですね。

| cpainvestor | 00:09 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
説得の科学


 最近、本業の方では、コミュニケーションに費やす時間がとても多くなりました。特に、メールではなく、人と電話や直接会って話をする時間が以前に比べて圧倒的に増えました。社内調整に多くの労力が必要な典型的な日本企業の組織風土による影響も間違いなくあるとは思うのですが、それ以上に、顧客への提案営業や交渉、スタッフの人事評価の面談や教育などに使う時間が実質的に増えていることが背景にあるのだと思います。

 こういう時間が増えてくると、「いかに人と人とのコミュニケーションを円滑化させるか」ですとか、「どのように交渉事を進めると、双方にとってより良い結果が得られるか」といったことばかり考えるようになることから、およそ会計専門家らしくない心理学系の本ばかり目がいくようになります。また、最近は、本業と直接関わるファイナンス系書籍であったとしても、「合理的期待」ですとか「効用最大化」から一歩離れた「行動ファイナンス」系の書籍を読むことが多くなりました。

 今日ご紹介する書籍「影響力の武器 実践編 イエスを引き出す50の秘訣」(下図左)は、私と同じような関心・悩みを持つ方には非常に役立つ書籍だと思います。この本は、人間の様々な嗜好、クセのうち、アカデミックな分野における実験で明らかにその傾向が証明されているものを50個とりあげて、それらをうまく活用することで、人をうまく説得するようなテクニックを多数紹介しています。以前にも紹介した「影響力の武器(第二版)」(下図右)の姉妹編といえますが、より実践的で、簡潔にまとまっており、お値段も安いので、「理論はいいから、実践ですぐに使いたい」という方には、オススメの書籍です。Eメールと電話を用いた説得効果の実験結果なども記載されていますが、誰もがなんとなく理解している「行間やニュアンスが伝わらないEメールの弱点とその対処法」が明らかにされていて興味深いです。

 この本を読むと、世の中のマーケティングや交渉テクニックのほとんどが、既にアカデミックな分野で証明されている人間心理のクセをうまく利用したものであることがよくわかります。こういったテクニックをマインドコントロール的に悪用するのは厳に慎むべきだとは思いますが、「自分自身が騙されることを防ぐ」という意味でも、知っていて損はないことばかりです。(というか、言われてみれば、そういう傾向は確かにある!といった思い当たることばかりの内容だったりします。)

 無理に「50の秘訣」にまとめた感もややあって、「影響力の武器(第二版)」に比べ、若干記述の荒さは目立ちますが、内容そのものは、セールスやカスタマーサポート職の方ばかりでなく、「専門知識・技術の次の次元での差別化」を考えている特定分野の専門家や技術者の皆様にも十分に役立つものだと思います。マニアックな出版社であることもあって、書店にはなかなか置いていないかもしれませんので、ご興味があれば、クリックしてみてください。

                 
| cpainvestor | 23:18 | comments(2) | trackbacks(1) | pookmark |
貧困大国アメリカ


 「新書」というのは、「ちょっと知りたいこと、興味を持ったこと」を軽く読めるのが売りだと思うのですが、表題の本は、新書に求められる期待レベルをはるかに越える「米国社会の負の部分」に焦点をあてた徹底取材に基づくルポルタージュで、「一読の価値あり」と思ったのでここで紹介することにしました。

                         

 (低所得者層の医療制度の崩壊)

 病院の民営化、製薬業界、医療保険業界のあくなき利益追求によって、米国の医療マーケットは活性化しており、オカネさえ払えれば世界最高水準の医療サービスを享受しうる環境が整っています。ただその一方で、低所得者の医療制度は実質的に崩壊しており、中流階級の家族の暮らしも、家族の誰かが一回の大病を患っただけで、あっという間に貧困層に転落する様子が、多くの個人の経験談によって明らかにされています。入院・施術コストが馬鹿高いので、貧しい妊婦は、「日帰り出産が当たり前」という現実には、本当に考えさせられます。「貧しい人間が受けられる医療サービスとしては、日本が世界最高水準にある」というのは、あながち冗談ではないのでしょう。

 (低所得者層の若者がイラク戦争を支えている現実)
 高騰する教育費を負担することができない貧困層の若者、不法移民の親達に連れてこられた市民権を持たない若者が、大学進学のチャンスを得たい、市民権を獲得して少しでも良い条件の仕事につきたいと考えた場合に、実質的な意味での唯一の方法は、「軍隊に入隊し、除隊後に奨学金を得て大学に進学すること」しかありません。また、多額の学生ローン、クレジットカードローンの返済に悩む大学卒業者も「軍隊に入隊して返済する」とい方法が現実的な選択肢となっています。このような事情で、軍隊に入隊し、最末端の兵士としてイラクの前線に派遣された貧困層の若者が、無事に帰国できたとしても、その6人に1人がPTSDに苦しんでいるという現実が、何人もの従軍経験者へのインタビューをもとに淡々と綴られています。

 米国の貧困層に焦点をあてたインタビューの積み上げと、これに基づく著者のジャーナリスティックな意見の部分が多いので、「データによる裏付けが少なく、かなり偏り過ぎた内容だ」という違和感を読後に持つ方もいるかもしれません。ただ、「極端な資本主義と自助」のみに頼った社会制度には、多くの歪みが生じるという事実をわかりやすい事例によってこれでもかと紹介する手法は、読者にとってなじみやすいことは確かです。
 著者の女性が、米国野村証券に勤務していたバリバリの高学歴キャリアウーマンで、「911テロをすぐ隣のビルから見ていた衝撃がジャーナリスト転身へのきっかけとなった」というあとがきのエピソードもまた興味をそそられまます。
 
 同じ新書でも歴史と伝統のある岩波新書は、読み応えのある硬派なものが多い印象を受けます。この本も新聞や雑誌の報道レベルでは伝えきれない内容が記述された労作だと思います。ご興味を持たれた方は、お読みになると良いと思います。

 

| cpainvestor | 23:41 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
自助努力だけで成功している人間なんていない


 マルコム・グラッドウェルの新作「OUTLIERS The story of success(下図)」を読みました。直訳すると、「突き抜けた人達の成功の法則」とでも言うのでしょうか。「天才〜成功する人々の法則」という邦題がどうもしっくりこないので、原題の方で紹介することに致します。
 
 タイトルからすると、世間一般に成功したと思われている方々の成功哲学や物語を集めた自己啓発書をどうしてもイメージしてしまいますが(私はその手の本、あまり好きではありません)、この本のテーマは、「人間が充実した人生を送る上で、外部環境、特に機会の均等というものが、本人の自助努力以外に、いかに重要であるか」ということが、グラッドウェルならではの多彩なエピソードの紹介と抜群の筆力で語られています。

 「人間が、特定の分野で、プロとしてメシが食えるようになるまでの訓練時間として、最低10,000時間が必要なのではないか」という仮説ですとか、「アジア人の多くが欧米人に比べ数学ができたり、勤勉だったりするのは、膨大な労働時間を必要とする稲作文化の影響なのではないか」という仮説など、「なるほど、これは面白い視点だ!」と思える内容が、興味深いエピソードと共に多数紹介されていて、最後までまったく飽きさせません。私も一気に読んでしまいました。

 詳細は、内容を読んで頂くとして、私が最も印象に残ったのは、最終章に出てくるKIPP(Knowledge is power program)というニューヨークの貧困地域の公立学校における取り組みです。入学希望者をフェアな抽選で選び、幸運を掴んだ生徒に対しては、通常の米国の公立学校の5割増し、6割増しの時間をかけて、徹底して勉強させる。その結果、生徒の9割が何らかの奨学金を得て私立か教区立の高校に進学することができ、KIPP出身者の8割以上が、家族ではじめて大学に通う人間になっているとのことでした。「良い教育を受ける機会が平等に存在することの重要性」が、この章では、淡々と語られています。

  「外部環境」という意味で、家族で初めて大学に進学させてもらえた私自身の体験を振り返ってみても、両親にとても感謝していることが二つあります。
  一つは、父がなけなしの自分の小遣いと昼食代を削って、惜しげもなく沢山の本を子供達に買い与え、「読書の習慣」をつけさせてくれたこと。もう一つは、幼い頃に兄弟そろって、ちゃぶ台に座らされ、「百マス計算」を徹底してやらされたことでしょうか(笑)。塾や予備校には行かせてもらえませんでしたが、この二つ、間違いなく私の人生に大きく影響していると思います。

 「天才!」などという大それたタイトルがついているので、引いてしまうところもあるかと思いますが、この本は、子供を持つ親の皆さんに、是非とも読んでいただきたい、多くの示唆が得られる「一冊」だと思います。「勝間本はもう十分、おなか一杯です。」という方には、なぜかグラッドウェル自身よりも訳者の勝間女史の顔写真の方を目立たせている書籍の帯と装丁に面食らうとは思いますが、グラッドウェルの書いている内容そのものが1,700円の価値を十分に上回っていますので、騙されたと思って読んでみてください。

 ちなみに、彼の著作はわずか3冊ですが、いずれも「バリュー」が高く、ハズレがありませんのでオススメしておきます。

    
| cpainvestor | 01:01 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

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