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自助努力だけで成功している人間なんていない


 マルコム・グラッドウェルの新作「OUTLIERS The story of success(下図)」を読みました。直訳すると、「突き抜けた人達の成功の法則」とでも言うのでしょうか。「天才〜成功する人々の法則」という邦題がどうもしっくりこないので、原題の方で紹介することに致します。
 
 タイトルからすると、世間一般に成功したと思われている方々の成功哲学や物語を集めた自己啓発書をどうしてもイメージしてしまいますが(私はその手の本、あまり好きではありません)、この本のテーマは、「人間が充実した人生を送る上で、外部環境、特に機会の均等というものが、本人の自助努力以外に、いかに重要であるか」ということが、グラッドウェルならではの多彩なエピソードの紹介と抜群の筆力で語られています。

 「人間が、特定の分野で、プロとしてメシが食えるようになるまでの訓練時間として、最低10,000時間が必要なのではないか」という仮説ですとか、「アジア人の多くが欧米人に比べ数学ができたり、勤勉だったりするのは、膨大な労働時間を必要とする稲作文化の影響なのではないか」という仮説など、「なるほど、これは面白い視点だ!」と思える内容が、興味深いエピソードと共に多数紹介されていて、最後までまったく飽きさせません。私も一気に読んでしまいました。

 詳細は、内容を読んで頂くとして、私が最も印象に残ったのは、最終章に出てくるKIPP(Knowledge is power program)というニューヨークの貧困地域の公立学校における取り組みです。入学希望者をフェアな抽選で選び、幸運を掴んだ生徒に対しては、通常の米国の公立学校の5割増し、6割増しの時間をかけて、徹底して勉強させる。その結果、生徒の9割が何らかの奨学金を得て私立か教区立の高校に進学することができ、KIPP出身者の8割以上が、家族ではじめて大学に通う人間になっているとのことでした。「良い教育を受ける機会が平等に存在することの重要性」が、この章では、淡々と語られています。

  「外部環境」という意味で、家族で初めて大学に進学させてもらえた私自身の体験を振り返ってみても、両親にとても感謝していることが二つあります。
  一つは、父がなけなしの自分の小遣いと昼食代を削って、惜しげもなく沢山の本を子供達に買い与え、「読書の習慣」をつけさせてくれたこと。もう一つは、幼い頃に兄弟そろって、ちゃぶ台に座らされ、「百マス計算」を徹底してやらされたことでしょうか(笑)。塾や予備校には行かせてもらえませんでしたが、この二つ、間違いなく私の人生に大きく影響していると思います。

 「天才!」などという大それたタイトルがついているので、引いてしまうところもあるかと思いますが、この本は、子供を持つ親の皆さんに、是非とも読んでいただきたい、多くの示唆が得られる「一冊」だと思います。「勝間本はもう十分、おなか一杯です。」という方には、なぜかグラッドウェル自身よりも訳者の勝間女史の顔写真の方を目立たせている書籍の帯と装丁に面食らうとは思いますが、グラッドウェルの書いている内容そのものが1,700円の価値を十分に上回っていますので、騙されたと思って読んでみてください。

 ちなみに、彼の著作はわずか3冊ですが、いずれも「バリュー」が高く、ハズレがありませんのでオススメしておきます。

    
| cpainvestor | 01:01 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
優れたドアノブは押せばいいか引けばいいかがすぐにわかる


 Google、YAHOOを筆頭に、Mixi、ぐるなび、一休.com、M3.comなど、ユーザーのサービス利用料を無料にして、広告スポンサーからの掲載料、コンテンツ提供会社から集客手数料等で稼ぐ、いわゆるポータルサイト型ビジネスは、うまく軌道に乗れば、設備投資もそれほど多くかからないため、高収益ビジネスになる可能性が高いと言われます。
 ただ、誰もがその「ビジネスの美味しさ」を知っているだけに、ユーザー獲得、及びその囲い込みの競争は激烈で、特定分野に絞り込んだとしても専門ポータルサイトとして生き残るのは、実際のところは至難の業であると言えます。

 そういった中で、30代女性の4人に1人がユーザーであると言われる料理レシピ検索No.1サイト「クックパッド」のユーザー数600万人超というのは、途方もないほど大きいアクセス数であると言えます。(ちなみに、私もレシピ投稿はしませんが、よくお世話になっています。レシピを印刷した時に、A41枚にパシッと収まっているのがいいです。)この方の紹介で読んだ書籍「600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス」は、このクックパッドのビジネスの仕組みや、その強みがとてもわかりやすく書かれていて、面白く読めました。
 
 冒頭のタイトルは、創業社長の佐野氏が、クックパッドのユーザーインターフェースを徹底してわかりやすく、かつシンプルに作りこんでいることのこだわりを端的にあらわす際に使う比喩だそうです。以下書籍の中の佐野社長の言葉を引用します。

  「安易にユーザーに行為を求めたり、説明やマニュアルを読んで下さい、FAQをご参照下さい、みたいなことが、実は僕は大嫌いなんです。 〜中略〜 レシピを載せるクックパッドと言っているくらいなんですから、レシピを載せることに関しては、説明を見ないでもできるようにしなければいけない。 〜 中略 〜 優れたサービスは無言語なんです。説明が必要なサービスはやはりレベルが低い」

 こう言われると、確かに、クックパッドの機能は極めてシンプルで、目の導線なども考えた上でWebサイトが作られているのがよく分かります。しかも、食材の名前(例えばジャガイモ)で検索すると、類似名の食材(例えば「メークイン」や「男爵」)を使った料理も出てくるなど、、料理検索の機能も速さも充実させて、徹底してユーザーの利便性を高めています。(この手の検索機能の裏には、相当なITテクノロジがあるようです。)

 着々と成長を続けてきたように見えるクックパッドですが、創業した1998年から7〜8年は、会員数は増えたものの、広告収入が思ったように伸びず、他の受託業務をしながら食いつなぐという綱渡りの時期が続いていたようですし、事業面でもいろいろなトラブルや失敗もあったようです。ただ、この時期に、安易な第三者割当増資や事業売却による資金確保ではなく、オペレーションコストを極限まで切り詰めて、ユーザーの利便性向上だけを地道に取り組んできたからこそ、その後の企画系・営業系人材採用などをきっかけにブレイクスルーすることができたと、この本には書かれていました。

 「順調に行くほうがオカシイ」というのが、ほとんどのベンチャーの現実の姿ですから、その中で生き残っていくためには、時には「何でもアリ」的な経営判断を迫られます。その時「どう動くか」というところに経営者の力量が問われます。私も職業柄、つぶれたり、休眠したりしてしまうベンチャーを沢山見聞きしてきましたが、最後の最後は、戦略とかマーケティングとかテクノロジよりも、「当たり前のことを地道にどこまでやり続けることができるか」という「老舗中小企業のオヤジ」的なセンスが生死を分けるような気がしています。

 久しぶりにワクワクさせられるベンチャービジネスの話を読みました。ただ、昔は経営者から直接お話を聞く機会も多かったことからすると、こういうエピソードを本で読んで知るばかりになってしまったのは個人的にどうも頂けません。IPOはともかくとして、もうしばらくしたら、こういった面白そうな会社を継続的に支援する仕事にまた戻りたいと、ふと思いました。

| cpainvestor | 23:53 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
クリエイティブクラスと非クリエイティブクラス
 
 5月の連休に「フラット化する世界」(下図)を読みました。自分がとっている書評レビュー雑誌で要旨をつかんでいたため、上下巻を購入してまで読む必要はないかと思っていたのですが、やはりこの時期だからこそ読んでおくべき書籍だと思いました。

 金融危機後の米国経済の不振と共に、「米国資本主義は凋落する」だとか、「グローバリゼーションの弊害が顕在化する」といった声も聞かれますが、上記書籍を改めて熟読するにつけ、IT、Webそれに激安海底ケーブルというビジネスインフラが整ってしまった以上、「代替可能な仕事は賃金の高いところから低いところに流れる」という「フラット化」の大きなトレンドは止めようがないのだということが見えてきます。  我々日本人は日本語という参入障壁のおかげで、英語を母国語とする人々と比べ、何年かの執行猶予期間が得られているのかもしれませんが、それでもこの不況下のコスト削減圧力の中で、この流れは強まることはあっても弱まることは決してないのだと思います。そうだとすると、昔ながらのビジネスを営む事業会社への公的資金注入とワークシェアリングというその場しのぎの対策では、何年も持ちこたえられないことだけは明らかです。

 この本の中で、コールセンターや、工場労働者、IT技術者と共に、「フラット化」する職業の事例として「会計士」というのが何回か採りあげられています(汗)。既に米国の個人税務申告書の作成業務の過半は、インドの会社でアウトソーシングされているとも言われています。会計監査の仕事も、メソトロジーの定型化とIT化がどんどん進んでいますので、比較的単純な分析作業などは、何らかの形でアウトソーシングされるなり、安い人に置き換わる日が近いようにも思います。
 こうなると、これまでお客様とコミュニケーションをとるより、専門書を読んでいる方が好きなタイプの、与えられた仕事をそつなくこなす情報処理能力が高いだけの専門家は、どんどん淘汰されることになります。顧客にとって「個」としての価値がない代替可能な専門家は、「Webで安いところを探します」ということになるわけです。

 フェラーリのデザインを担当した日本の工業デザインの第一人者である奥山清行氏は、著書「フェラーリと鉄瓶(下図)」の中で、「これからの労働者はホワイトカラーとブルーカラーではなく、クリエイティブクラスと非クリエイティブクラスに区分される」と言っています。ここで言う「クリエイティブクラス」とは、デザイナーや音楽家ばかりではなく、企業の内外で新たな企画なり仕事なりを生み出すとか、仕事の仕方を大幅に改良するような人を指すようです。

 つまり「個」の力を源にして、新たな発想でアウトプットを生み出すような仕事の仕方を志向していないと、生き残れないということなのでしょう。チームプレーに徹しているだけではダメだとも言えます。やはりこれからの時代、以前にも記載したように、専門職にも個性を発揮する「右脳系」のセンスがこれまでにも増して求められるのだということを改めて実感しました。

 組織に埋没することのないよう、個人としての定期的なアウトプットの機会を確保しながら、「右脳系会計士」には、どんなスキルが必要なのか、私も考え続けたいと思います。

 どんな分野であれ、代替されにくい「右脳系ビジネスプロフェッショナル」を目指す皆様には、今日ご紹介した書籍、いずれもオススメですので、お読みになると良いかもしれません。

     



| cpainvestor | 07:14 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
自分の限界を問い直す
 
 3月に入って、今日初めて「休みらしい休み」をとることができました。昨年12月、今年の1月と、お客様から相談を受けていたような投資案件がほとんどストップしたこともあって、本業の方はかなりゆるりとしていましたが、ここへ来て立て続けに3件です。以前から相談されており断るわけにはいかない案件であったり、指名で頂いた案件だったりするものもあって、今月は短い睡眠・長い通勤時間以外のほとんどの時間を仕事に捧げる形でなんとかここまで踏みとどまってきました。2件は大過なく終えることができそうで、現在3件目の中休み、明日から追い込みといったところです。

 昨年1年間は、組織メンバーを育ててうまく使う、クライアントと自分との間の「立ち位置」を少しでも改善することで、「生産性を上げる」ということを毎日考えてきました。ただ、ここへきてあえて原点に立ち返り、「らしくない」と言われても「自分自身の限界を問い直すことで、ストレッチする」ということに再チャレンジしようと思い、日々過ごしています。家族には大変申し訳ないと思いつつも、そういう時期なのだと思っています。

 最近、こちらのコラムは滞りがちになっておりますが、どうかお許し下さい。

 毎日訪れて頂いている読者の皆さんのために、往復の電車の中で読んだ書籍のうち、オススメのものを読みやすい順番にいくつか挙げておきます。

「現役力」

     

 優勝請負人、球界最年長投手、工藤公康氏の著書です。インタビュー内容をライターさんが書き起こしたのだとは思いますが、やはり、28年間第一線で現役を貫いているだけあって、その一言一言に、金言が詰まっているように思いました。いくつになっても新しいことに取り組み、自分を限界まで追い込もうとするその姿勢には、どんな業界であれ、プロを目指す方々には、参考となるアドバイスが必ず一つはあるように思います。

「イノベーション・シンキング」

     

 ロジカル・シンキング(論理的思考)で頭がコチコチになっている方にオススメのラテラル・シンキング(水平思考)本です。ここに出てくる、「水平思考パズル」の答えに苦しむことで、「視野狭窄」に陥っている自分に気がつけるのではないかと思います。前提条件を疑うこと、もっと視野を広くとって物事を考えることの大切さを学ぶことができるように思います。

市場の変相  
   
     

 なかなか読み応えのある池田信夫氏オススメの直近の世界経済解説本です。2007年12月に原書が出版されたのだということを考慮に入れると、「もう少し早く読みたかった・・・」という印象を持つ書籍かもしれません。経済状況に関する多くの「ノイズ」の中に、「危機の兆候」があったことが示唆されており、考えさせられる内容でした。ただ、私にはやや難しく、冗長と感じる部分も多く、「Exective Summary」が欲しいなと思いました(笑)。

 投資の方は、日本は「完全放置」ですが、米国金融株は、先月から今月頭までに大分残高を増やしました。
| cpainvestor | 23:58 | comments(6) | trackbacks(0) | pookmark |
知の呪縛
 
 誰しも自分の専門分野に関して、「いかにして難しいことを正確に分かりやすく、かつ聞き手の記憶に残るような形で伝えるか」ということに頭を悩ませた経験があるのではないでしょうか。特に、自分の専門であればあるほど、「情報の客観性・正確性を重視しよう」として統計的数字を駆使してみたり、「複眼的な視点を提示しよう」として、いくつもの説を併記したりして、「結局何が言いたかったの?」というプレゼンや解説をしてしまったことがある方も多いのではないでしょうか。

 今日、ご紹介する書籍、チップ・ハース、ダン・ハース著「アイデアの力」(原題 Made to Stick – Why Some Ideas Survive and Others Die )は、情報の発信者が、その情報を知ってしまったが故に、それを知らない受信者の気持ちがわからなくなるという現象を「知の呪縛」と名付けて、それをどのように克服していったら良いのか、「聞き手の記憶に焼きつくメッセージ」の特徴をSuccess:Simple Unexpected Concrete Credentialed Emotional Storyというコンセプトにまとめて非常にわかりやすく説明しています。さすがに全米150万部ベストセラーのビジネス書だけあって、その内容は、(後書きの勝間女史の解説は必要ない気がしますが)1,600円の価値が十分にある良書だと思いましたので、ご紹介することにしました。

       


 自分への備忘録を兼ねて、この本の記憶に残ったメッセージを書きとめておきます。

Simple:単純明快である
・ 3つ言うのは、何も言わないのに等しい
・ 考え抜かれた単純なアイデアは、行動を決定する驚異的な力を持つ
・ 簡潔なメッセージは記憶に焼きつくが、それと価値があることとは別物である

Unexpected:意外性がある
・ どきりとさせる意外なメッセージの伝え方で聴き手の類推機械を破壊する
・ 優れた文章は、全て謎かけで始まっている
・ 好奇心が生まれるのは、知識に隙間を感じたときである

Concrete:具体的である
・ ブドウにケチをつけるイソップの寓話の方が、抽象的な助言よりわかりやすい
・ 優れた教師は、アイデアのフックの数を増やすコツを知っている

Credentialed:信頼性がある
・ 信頼性と効果の大部分は、その地域ならではの細部が支えている
・ 統計はそれ自体が役立つわけではない。役に立つのは尺度と文脈だ
・ ホワイトハウスの式典で料理の注文を受ければ、どこからでも注文を取れる

Emotional:感情に訴える
・ 自分の父親が「いけてるね」などと言い出したら、その言葉にもうインパクトはない。
・ 抽象的メリットを語らず個人的メリット、メリットのメリットだけを語れ
・ 共感は全体からでなく個々の事例から生まれ出る

Story:物語性がある
・ 物語には、シミュレーションと励ましという驚異的な二重効果がある
・ 人を励ます物語には、「挑戦」「絆」「創造性」の3つの筋書きがある


 この本、いわゆるマーケティングノウハウ本としても十分に使えるものなのだと思います。「知の呪縛」に心当たりのある方ほど、原点に立ち返って、この本に書かれているチェックリストで、自分のアウトプットを見直すと良いかもしれません。私もさっそく、今週予定されているプレゼンで実践したいと思います。

 ただ、この本のテクニックを駆使して、最初は「記憶に残るメッセージ」を聴衆に伝えることができても、「本物の中身」がなければ、プロフェッショナルとして長続きはしないでしょう。

 「わかりやすく伝える努力を続けること」、「プロとして厳しい顧客の要求に応える実務の第一線に立ち続けること」この両立を、個人的にはできる限り目指していきたいと思っています。
| cpainvestor | 00:04 | comments(3) | trackbacks(0) | pookmark |
快適睡眠のすすめ
 
 だいたいカバンの中には、ビジネス書か専門書1冊と文庫か新書1冊の計2冊を入れて、通勤時間などの空き時間があれば、その時の気分に合わせてどちらかを読むようにしているのですが、先日読んだ「快適睡眠のすすめ」(下図)は、かなり参考になる部分が多く、新書としてはかなりバリューなのではないかと思い、紹介することにしました。

         

 この本、睡眠の研究をされている方が、ひたすら「眠りのメカニズム」と「快適な睡眠環境の条件とはどういうものか」を中心に書いているのですが、「短時間の昼寝が午後の活動の集中力を高める効果」や「運動や風呂の高い睡眠誘導効果」などが、科学的な実験データと共に解説してあり、非常に説得力がありました。また、枕やマットレスの選び方や、部屋の照度や温湿度、更にはパジャマと下着の材質まで、「睡眠の快適性を求めるならこういうものが良い」というアドバイスがその根拠と共に記載されており、最後には、(個人差は大きいと前置きしながらも)、世代別の睡眠の改善ポイントまで指南してくれています。
 「規則正しい生活」と「快適な睡眠(睡眠の質)」も密接にかかわることから、筆者は「規則正しい生活」も推奨しているわけですが、これはまったく耳の痛いところです。

 私も30代も半ばにさしかかって、以前のように無茶な徹夜をすると次の日につらくなることも多くなり、「快適な睡眠の重要性」をひしひしと認識していた矢先だったので、この本に書いてあることを一つでも多く取り入れて、「快適睡眠」をめざしたいと思いました。
 私と同じように「質の高い眠り」を求めている皆さんには、(前半はやや退屈な実験データの分析が続くのが玉に傷ではありますが)購入しても損はない一冊かとは思います。

 本を読むとわかりますが、日本人は、他の欧米先進国と比べて最も平均睡眠時間が短いようで、特にその傾向は女性が顕著であるようです。夜の就寝時間は夫に合わせ、朝の起床時間は、子供のお弁当作りで早く起きるなど、「家族の大黒柱」として活躍する女性の皆さんのご苦労がしのばれます。
| cpainvestor | 01:51 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
予想どおりに不合理
 
 先日、引越しをするにあたり、複数の引越し業者の見積りをとったのですが、その際にA社の営業担当者は、私達が現在の住居に引越しする際にこの会社を利用したことを告げると、「それでは、インターネット申込みに割引に加えて、再利用の優遇割引をしましょう!」と言って、ものすごく感じの良い営業マンが以下のような見積書を作成し、「他社さんも検討した後、必ずまた連絡してください。」と言い残して爽やかな笑顔で帰っていきました。(以下の金額表示は全て仮数字です。)

特殊用品梱包作業        ××
基本運搬作業           ××
エアコン工事            ××
クレーン利用            ××
・・・
合計                 145,000円
インターネット割引         △5,000円
お得意様割引           △35,000円
お見積合計             105,000円
(無料サービス:ガムテープ、ダンボール、耐震ストッパー)

 これに対し、B社の営業マンは、あまり愛想は良くありませんでしたが、ISOを取得しているなど、サービス品質の高さなどを淡々と説明した上で、てきぱきと以下のような見積りを作成しました。(A社の見積り値段は話していません)

特殊用品梱包作業          ××
基本運搬作業             ××
エアコン工事              ××
クレーン利用              ××
・・・
合計                  120,000円
インターネット割引          △5,000円
お見積り合計             115,000円
(無料サービス:ガムテープ、ダンボール、お米2Kg)

 私が「他社より、まだかなり高いのですがもう少しなんとかなりませんか」と言うと、B社の営業マンは、「仏滅引越しでこの日はもともとあまり稼動していないはずですから、もう少し何とかならないか連絡してみます」と言って、その場で上司に連絡をした後、「この場で決めていただけるなら、90,000円でやらせて頂きます。」と提案してきました。

 私はB社に即決してしまいました。

 この後、A社の営業担当者に電話を入れたら、「再度連絡してくれるように言ったじゃないですか。何で即決するなんて言ってしまったのですか。今からでもB社よりも絶対下げさせて頂きます。いくらだったかおっしゃって下さい。」と半分絶叫調で頼まれましたが、お断りしました。
 あまりの態度の豹変ぶりを見て、「もう少しがんばればもっと下げられたかなあ」とも思いましたが、一番気になったのは、最初のお得意様割引提供前の表示金額でした。

 最初に高い値段で記載しておいて、「お得意様割引」とか「仏滅割引」とか、何か理由をつけて引く形で、目標プライスに誘導するように教育されているのでしょうが、A社は、スタート時点が高すぎ、「やりすぎ感」を感じてしまいました。過去にこのブログでも紹介した「コントラストの原理」の応用だとは思うのですが、「やりすぎ」は逆に心証を悪くします。

 今日ご紹介する書籍、ダン・アリエリー著 熊谷淳子訳「予想通りに不合理」(早川書房)(下図)には、この手の「おとり効果」や、「無料サービス」に関する人間の異常な弱さ、社会規範のコスト(楽しみ、もてなしの気持ちなど、善意でやっていたものが、若干でも報酬をもらったとたんに不快になるような現象)など、人間の不合理とも言える「心理的なクセ、バイアス」を、学生に協力してもらって実施した様々な実験による検証結果と共に面白く紹介しています。

             

 以前紹介したオススメ本「影響力の武器[第二版]」と似たような内容ですが、「予想どおりに不合理」の方は、著者が行動経済学者だけあって、「経済合理性で行動できない人間の性」のような心理的なバイアスにより焦点をあててわかりやすく解説しています。

 この著者、イグ・ノーベル賞(医学賞)も受賞しているだけあって、本当に面白い実験を沢山やっていますし、翻訳もなかなか読みやすく仕上げていると思います。この書籍を読むと、「私達の常識だとか品性というものが、いかに危ういものか」、また、「心理的バイアスを逆手にとったマーケティング上のテクニックによって、いかに私達がカモられているか」ということを改めて痛感させられます。

 賢明な投資家・消費者を目指す皆さんにオススメの1冊かと思います。

 ここ数ヶ月、ベストセラーになっているものも含めて、かなりの冊数のビジネス書を読んだのですが、久しぶりに紹介したくなる本に出会いました。「米国でベストセラーになったようなビジネス書の翻訳本」は、国内ベストセラービジネス書と比較して「かなり質が高い」ような気がするのは、私だけでしょうか。
| cpainvestor | 19:42 | comments(5) | trackbacks(0) | pookmark |
危機察知力と適応力
 
 駅の書店に立ち寄った際に購入してそのままになっていた、中村俊輔著「察知力」(下図左)を読みました。正直言って740円の新書にしておくにはもったいないほど、良い内容でした。こういう本を読むと、やはり、どんな世界でも超一流になるには、それなりの哲学とセオリー、そしてたゆまぬ努力があるのだということを実感させられます。

 (ご本人曰く)体格的には決して恵まれた方ではなく、俊足でもない中村選手がサッカーの本場欧州のトップリーグで生き残ってきた背景には、もちらん恵まれた才能と、人一倍のたゆまぬ努力があったのでしょうが、ご本人は、何より場の空気を読んで、常に先を予測し、考えて行動する「察知力」こそが最も重要である旨を、ご自身のサッカー人生を振り返りながら、何度も強調しています。
 そして、あえて今より厳しい環境に身を置いて、そこでこの「察知力」を最大限発揮して、新たな課題を克服しながら適応していくことこそが、自分の能力の高める(彼はそれを「自分の引き出しを増やす」と表現しています)最も良い方法だとも指摘しています。

 この本を読んで、メジャーでセットアッパーとして活躍した長谷川滋利投手が書いた「適者生存」(下図右)という著書を思い出しました。長谷川氏の著書においても、下記のような、中村選手と似たような趣旨のことが書いてあったように思います。
 メジャーという環境に、うまくアジャストメント(適応)できるかどうかが、生き残るためには最も重要である。そのためには、事前に想定されるリスクに関してはできる限りの準備をして臨み、新しい環境に入ってからは、ライバルから徹底して学び、彼我の差の原因となっている課題を自ら見つけ、これらを一つ一つ対処策を見つけてつぶしていく。この繰り返しが能力をストレッチさせる。

       

 人より一歩前に動き出せる先読みのセンスと優秀なライバルの徹底したベンチマーク、厳しい環境に自ら身を置くからこそ得られる新しい課題の発見とその克服の継続、どの世界でも一流のプロが考えることは似ているような気がします。何かを突き詰めると、結局、皆、同じような境地に到達するということなのかもしれません。上記2冊は、サッカーや野球がよくわからなくても、多くの職業人にとって、学びのある2冊だと思います。

 お二方には、ぜひ、職業人として突き詰めるだけでなく、父親、夫としての役割もどのように対処してバランスをとるべきなのか。そのあたりの続編も個人的には書いてもらいたいところです。
| cpainvestor | 07:02 | comments(7) | trackbacks(0) | pookmark |
企業の本質的価値を見抜く訓練を続けるということ
 
 土曜日は子供の運動会に参加して来ました。疲労困憊の体に鞭を打って早起きをして出かけましたが、無事に座席を確保し、家族で共に楽しみました。株価はどんなに暴落しようとも、日々の生活の営みは続き、息子達が確実に成長しているのを見て安堵しました。

 さて、自宅に帰ったところ、シェアーズの山口さんから、新著が届いておりました。この暴落の最中、絶妙なタイミングで出版された著書のタイトルは、「企業分析力養成講座(下図)」、とてもシンプルですが、中身は濃いです。

          

 今日は10月下旬に行うセミナーの原稿を作る予定だったのですが、ご献本頂いた原稿、これまでも山口さんから何度か見せてもらっていたので、気になって読んでしまいました。以下、今回の彼の著書に好感が持てた点を列挙します。

企業のビジネスを、安直な業種分類などを使うことなく、彼なりに一般化した9つの視点から分析することを試みていること。
上記9つの分析の視点を理解しやすいものとするための手法として、個別企業のケース・スタディを試みていること。(なぜ、この会社を採りあげたかの理由が明確。)
初心者にとっては難解な財務諸表本表の分析を極力行わず、様々な財務指標を、図やチャートを用いてわかりやすく示し、「一目見てわかる!」という体裁にこだわることで、読者の敷居を低くしていること。

  全体を貫いているのは、業種という狭い視野でビジネスを見ない「投資家目線」、わかりやすさを徹底追求した「ビジュアライズ思考」、それに、「一つ一つのビジネスに対する興味と深い洞察」といったものでしょうか。

 内容的には、「本物」ですし、セミナーに行ったら数万円の内容が、2千円弱で学べるわけですから、当然オススメします。このような総悲観の相場状況のときにこそ、「企業の本質的価値を見抜くスキル」を磨き続けておくことが、後々じわっと効いてくるように思います。

  ほぼ同世代の彼と仕事を一緒にさせてもらうことがこれまで何度かあり、ここ数年、私自身大きな刺激を受け、勉強させてもらいました。企業分析スキルそのものも、いわゆる「切れ味鋭いコンサルタント」として、私などはとてもかないそうもないほど素晴らしいものをお持ちだと思いますが、何より、自らの「思い」を具現化するために起業して、従業員を雇い、経営者として苦労していることが、私にとっては魅力的です。

 彼が今の信条を曲げずに、「まっとうな企業分析のスキルを身につけて、長期的視点から個別企業への投資を行うことの醍醐味、社会的価値」というものを、個人投資家の皆さんに伝え続ける活動を継続している限り、微力ではありますが、私も力になりたいと思っています。

 まずは、側面支援として、私が担当する大手上場企業数社の社内研修テキストとして、彼の新著を採用することに致します(これで、毎年○百冊程度は売れるでしょう)。それから、さりげなく、講義の中で、
バリューマトリクス

も使って、即興で企業分析を行うことで、クチコミ宣伝もしてしまいましょう(笑)。

 最後に、次回作の期待を二つほど。

会計士目線で見ると、「ざっくり分析」の後に、バリュエーションの前提条件につながるような、財務面での詳細な分析が欲しいです。続編(中級編)では、その部分を是非、お願いします。
この書籍、企業分析の入門書として、とてもよくできていると思います。それだけに、各章ごとに、「より深く学びたいあなたのために」という専門書リファレンスをつけて欲しかったです。

 山口さん、シェアーズの皆さん、出版プロジェクト、本当にお疲れ様でした。
| cpainvestor | 22:21 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
マイクロトレンド
 
  最近の私の読書は、財務でも会計でも投資でもなく、販売動向やマーケティング戦略、その他の社会現象などを感性ではなく、ロジックや定量データで説明しているものに興味が向いています。ここ最近では、「急に売れ始めるにはワケがある〜ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 」「「みんなの意見」は案外正しい」と立て続けに読んできました。いずれも、購入する価値のある良書だと思いましたが、一番面白かったのは「マイクロトレンド〜世の中を動かす1%の人びと(下図左)」でした。これ、一話完結形式で数多くの事例がとりあげられていて読みやすく、オススメです。

                

  「マイクロトレンド」というのは、社会のメガトレンドにはなっていないものの、社会に重要な影響力を持つような、新しく生まれている直感ではなかなか捉えられないトレンドのことを指すようです。言葉で説明するより、紹介されている米国の事例をいくつか列挙した方が良いと思います。

○年下男性とつきあう女性
経済的基盤を持つ成功した年配女性が若い年下男性をボーイフレンドに持つケースが増加している。

○高齢の新米パパ
40歳を過ぎて初めて新生児の父親になる人々が増加しており、50歳以上の父親の増加率も高い。

○介護をする息子
自らも高齢者である実の息子が自分の両親を介護するケースが増加している。

○パラサイトペット
ペットを家族とみなし、息子や娘と同様にお金をかける人々が増加している。

○働く定年退職者
定年退職後も元気に働く高齢者が増加している。

○言葉で稼ぐキャリアウーマン
ニュースキャスター、ジャーナリスト、弁護士など、言葉を駆使する職業における女性の比率が増加している。

○質素な富裕層
投資や子女の教育、慈善事業には大金を投じるが、豪華な宝石やデザイナーズブランド、高級外車などには目もくれず質素な生活をする富裕層がかなり存在する。

○難聴になる人々
難聴の障害を持つ人々は、30年前に比べ倍以上に増加しており、しかもそのうち1/3は高齢が原因ではなく騒音によるものだという。

○プチ整形マニア
美容整形手術の件数は大幅に増加しており、中には夫婦で整形手術を受けに来る人々もいる。

○ハイテク好きの女性
コンピュータや携帯電話を初め、多くのデジタル家電製品を使いこなすテクノロジー好きな女性が増加している。

  言われてみると、「なんとなく日本でもそんなトレンドがあるのかもしれない」という心当たりのある内容がいくつもあるのではないでしょうか。社会がどんどん成熟化、多様化する中で、個人の嗜好がどんどん細分化されていることの表れなのでしょう。こういった細分化された、なかなかはっきりしない嗜好のトレンドに気づき、その背景にある大きな構造変化を捕まえられるかどうかが、ビジネスや投資を行う上でも極めて重要な時代になっていると著者は指摘しています。

  惜しむらくは、日本語版において、かなりの抄訳となってしまっていることでしょうか。日本人にはあまりなじみのない政治や宗教に関するマイクロトレンドがごっそりと抜けて、代わりに「下流社会 」の著者、三浦展氏の 「マイクロトレンドの日本における現状の解説」が付加されています。出版社の販売戦略の一環だとは思うのですが、これがいかにも「帯に短しタスキに長し」なので、「原書の忠実な和訳の方が良い」と思ったのは、私だけではないと思います。
  英語がお得意な方は、是非、原書(上図:PB版の方が安いです)にチャレンジしてみると良いのではないでしょうか。また、こちらのサイトを見るのも、結構楽しいかもしれません。
| cpainvestor | 06:20 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

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